オリジナル小説

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剣を構え、黒い化け物と対峙するキロ・・・
(ああ、逃げそびれた、俺ってホント馬鹿)



黒い化け物は、キロの持つ白い剣を恐れているように見えた。
使い魔「頑張ってください。」
安全地帯に避難する使い魔



グォオオオオオオオオ
大食い悪魔は吠える。轟音が周囲に響き渡る振動であたりがビリビリ震える。
教会の建物と同等の巨大な体、馬ほどの移動速度・・・正面衝突するだけでキロの身などただの肉塊になってしまうだろう。



突進してきた化け物を避け、側面から剣を突き立てた。

黒い煙が血のように噴き出してきた。黒い煙はあたりをさまよいつつキロの白い剣に浄化されるように吸収されていく、これが魔力を食らう剣の能力らしい。
剣の刃から柄へそして体へ流れ込んむ・・・それと同時に心臓に強烈な痛みが走り、頭に無数の人々の悲鳴にも似た声が流れ込んできた。
「・・母さん、おなか減ったよー」
「・・・ああ、なんかたべてぇな・・・」
「水、水・・・咽が乾いた・・・水が飲みたい・・・」




使い魔「危ない、避けてください。」
一瞬呆けたようになったが、とっさに避けた。



ドカン!!!
後ろにある屋敷の塀を突き破り、食糧倉庫の塀も、壊した
そして、屋敷の脱穀前の麦に食らいついた。
おぞましい食べっぷりだった。
化け物の目から赤い涙のような液体がとめどなく流れている。



隙を逃さず切りつけた。
黒い煙が傷口から立ち上り、キロの白い剣が、その煙を吸い込んでいく・・・



大食い悪魔は食べることをぴたりと止めた。
キロのことを本気で敵だと認識したらしい。
必死なその様は食料用の豚を絞殺した経験を思い起こさせた。



何度も刺し、黒い煙を吸収するほどに悪魔は小さくしぼんでいった。
死闘の末、化け物は倒れこみ、動かなくなった。黒い煙を吸いつくした後には・・・
キロ「・・・ブタ?」
一匹の豚が、あらわれ、そそくさと逃げて行った。




あたりが明るきなってきた、夜が明ける。
キロは勝利の余韻に浸っていた。
(やった、俺が、俺が倒したんだ。)





様子をうかがっていた人々が、一目散にキロの前に駆け寄ってきた・・・
キロを賞賛するのかと思うと
人々は、残った屋敷の麦を袋に入れて、一目散に逃げ出した。

キロ「え・・・ちょっと・・・待って・・・」

たくさんの人が同じことをした。
屋敷に残った麦はもうほとんどなくなってしまった。




屋敷の家主が、遅れてやってきて、
「あああああああああああああああああああああああああああ・・・」
叫び膝をついた。
「わしの麦、わしの麦が・・・」
主人の目がキロを見た。それはキロの望む称賛と尊敬の目ではなく、麦泥棒を見る目だった。
キロは逃げ出していた。




キロ「はぁ・・・はぁ・・・」
何も食べずに戦ったキロの体力は限界に近かった・・・ついに道に倒れこんでしまった。
これだけお腹が空いたのは人生で初めてかもしれない。



自らを天使と名乗る少女がどこからともなく現れた。
「・・・・」


使い魔「ご主人様、この方はお腹が空いているようです。」




「・・・そう・・・今朝わたしが食べきれなかった・・・朝食の残りならここにあるけれど・・・」
と食べ物を差し出した。




キロ「・・・・・・・・・・・」

あれだけ大変な思いをした対価がこの”食べかけ”だと・・・そうだこんなもの食えるかと突き返して、この仕事自体やめてしまおう。


心ではそう思っていても目がパンから離れない、手が勝手に動きパンを口に運んでいた。
気が付くとキロは施しを受けていた。