オリジナル小説
使い魔「さあ、悪魔退治の旅へ」
キロ「・・・おお」
キロ「・・・・・・」
キロ「ちょっと待った・・・なんで俺がそんなことしなきゃならないんだよ」
使い魔「ちっ」
キロ「今舌打ちした?」
キロ「俺だってやることがあるんだ。就職活動とか就職活動とか」
使い魔「人間は大変ですね」
キロは西の穀倉地帯から南下していた。
この辺りは、雨の多い地域だ。
自分の背丈の何倍もある木が生い茂り樹海などと呼ばれていた。
安易に街道以外を通ろうとすれば森を抜けることもままならず、白骨となって発見すらされないだろう。
女性が森の前の像に祈りを捧げていた。彼女はとてもやつれているように見えた。
「どうか娘をお返しください。娘がまだ生きていますように・・・」
引き返すところでばったりと出会ってしまってバツが悪かった。
女性は雨に濡れているキロを哀れに思ってか声をかけてきた。
「こんなにも濡れて御可哀想にどうか家で休んでいってください。」
奥さんの娘さんは、10日前にけんかをして家を飛び出したそうだ。何も持たず、この森に入るところを目撃されたようだった。
森を捜索したが何も手がかりが見つからなかったらしい。
女性の泣きはらした目が見るに堪えなかった。
翌日、雨
森の前に立った
使い魔「この辺りは有名な自殺スポットだそうで・・・」
キロ「へぇ・・・そう」
使い魔「昨日気づいたんですが、本に反応があります。この森の中に悪魔がいます」
キロ「・・・行かなきゃダメ?」
雨女悪魔
憂鬱とため息の悪魔
人の感情を消沈させて自分のテリトリーに引き込む
植物のような長い髪と無数の手を持つ形相
使い魔「もしかしたら、女性の娘さんは悪魔に捕らえられているだけの可能性があります。」
キロ「・・・一宿一飯の恩義だ。少し森に入って様子を見るだけだからな・・・」
森は奥へ行くほどに暗く静かになっていく。
気持ちが沈む。
キロ「なあ、ひとつ聞いていいか?」
使い魔「なんです?」
キロ「俺が死んだら、どうなる?」
使い魔「・・・・・正直にいいますと剣を回収して次のひとを探します。」
キロ「使い捨てかよ。」
思い出したくもないつい最近の出来事が走馬灯のように頭をめぐる。
(キロ=エバンスを追放処分とする)
(・・・貴様は首だ・・・即刻立ち去れ・・・ほんとうにどうしようもない・・・)
(なあ、もうしばらくこの城に滞在したらどうだ・・・せめて次の仕事が見つかるまで・・・)
(・・・心配しなくても大丈夫・・・俺は大丈夫だから・・・)
気持ちが沈む。
暗い森が牙をむく。