オリジナル小説

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キロは体調が日に日に悪くなっているのを感じていた。
毎晩悪魔と戦う夢を見た。
自分がすんでのところで死にそうになるその刹那がありありと浮かんできた。



外に出てぼんやりしていた。
ここはいい村だと思った。
みんな親切でいい人たちばかりだ。
今まで、悪魔と戦ってきたことが悪い夢だったんじゃないかと思えてくる。
しかし、キロは天使の忠告通り、剣を手放さずお腹にしっかりと括り付けている。



シスターさん「眠れませんか?」
キロ「ええ、お恥ずかしながら」
シスター「あなたは出会ったときからどんどんやつれていくように見えます。何か悩み事や苦しいことがあるならばお話しください。」
キロ「・・・・いいえ、別に」


シスター「・・・・私の話をしましょうか。わたしは小さいころから頭が悪く体力も乏しく病気がちでした。みんなわたしを厄介者のように扱って、でも、ここへ来てからは違います。本当に優しい方ばかりで、みんな私を好いてくれて、家族のように思ってくれる。」



シスター「わたしは、この村に恩返しがしたいんです。この村のみなさんを家族のように思っています。そして・・・」



シスター「あなたのことも、」
キロ「え?」
シスター「あなたは昔のわたしに似ています。だから、あなたのことも救ってあげたい。」



キロ「・・・・・」
キロは悩んだ。けれど我慢できなかった。
キロ「あの、とても信じられないかもしれませんが、狂ったひとに見えるかもしれませんが、」
シスター「ええ、大丈夫です話してください。」



キロは話した。
仕事を首になって途方に暮れたこと。
天使に悪魔を退治しろと言われたこと。
甲冑のおじいさんを痛めつけたこと。
無人島に閉じ込められたこと。
倉庫をむちゃくちゃにして逃げてきたこと。
おばあさんが死んでしまったこと。
ここへ来たいきさつ。




シスターは親身になって聞いてくれた。





シスター「信じがたい話ですが、落ち着くまでこの村でゆっくり過ごしてください。話を聞く限りでは、その剣があなたに悪い影響を与えているのかもしれませんね。知り合いにそういうものに詳しい方がいるので、その剣をお貸しいただければ聞いてくることもできますが?」
キロ「この剣を貸す・・・」
悪魔のことが妄想だったとしても、キロは剣を離すのが怖いと思った。
シスター「・・・今すぐでなくともかまいません。きっとこの村で過ごせば、あなたの心の傷は埋まると思います。」



キロ「・・・人間は自分の利益のことしか考えていない・・・」
シスター「?」
キロ「俺の育て親の口癖、いえ教育方針です。でもあなたのことを見ているとそんな人間ばかりでないって・・・そう思います。」

シスター「・・・・私は・・・そこまで褒められた人間ではありませんよ・・・」
その声は弱弱しく小さかった。



キロはもう一度布団にもぐった。
誰かに悪魔のことを話して心が軽くなった気がした。
そして、とても幸せな気分になった。




キロ「そうだ、剣をシスターさんに渡してしまおう。そうしないと前に進めない気がする。」