オリジナル小説

オリジナル小説




キロの育ったジーメス村はただの貧乏な田舎町だった。
今、キロの見ている景色は夢であろうか。
そびえる大きな建物に
派手な看板と大きな道にたくさんの街灯
こんなに賑わう繁華街がキロの前に広がっていた。


並び立つたくさんの店がカジノカジノでひしめき
羽振りの良さそうな人々が闊歩していた。




キロ「・・・・ここはどこだ?」
使い魔「あなたの生まれ故郷のジーメスの村でしょう?」




いつの間にこんなことになったのだろう。
そういえばもう5年もここに帰ってきてはいないけれど
あまりにも急すぎる


そのとき使い魔がもっている本が反応しページが開いた




お金を生む出す悪魔

大量のお金を生み出し人を狂わせる

太った猫のような外観

人を煽ることを生きがいにする





キロ「悪魔の仕業か・・・」
使い魔「ですねー」



キロ「できればここは早急に立ち去りたかったんだけど・・・」
「・・・・あれーキロ?」
声をかけられた先にいたのは、かつての孤児院の職員のおばさんだった。
名前をマロさんといった。
鬼のように怖いマクセル院長の反面
このひとは抜けてるところもあって甘いひとだった。



キロ「・・・マロさんお久しぶりです。」
マロ「本当にひさしぶりねぇ」



キロ(無難に話して切り抜けよう。)





マロさん「立ち話もなんだから孤児院で一晩くらい泊まっていきなさいよ。」
キロ「・・・い、いえ、先を急ぐので・・・」

マロさん「ほらほら遠慮せず」
マロはキロをぐいぐい孤児院まで引っ張っていった。




孤児院へたどりついた。
「そのお兄ちゃんは誰?」
当たり前だが、どの子も全く知らない顔だった。




マロさん「このお兄ちゃんは、カルデラの兵士なんだよ。」
カルデラってあのおとぎ話に出てくる国の?」
「お兄ちゃんすごい」
カルデラは100年前にこの地方一帯を支配して全盛期を迎えた都市だった。
今でこそ陰りが見えるもののやはり皆が憧れる古都だった。
そこで働けるというだけで、このあたりのひとはすごいことだと思う風習が今も残っている。


キロ(・・・・もしかしたら、黙っていたらバレないかも・・・)


「そのキロ君は最近、仕事の失敗によりカルデラ城での職を解雇され、カルデラ城を追放されています。」
奥からゆっくりとマクセル院長が現れた。


キロは顔が真っ赤になった。マクセル院長はすべてお見通しだった。
周りの子たちがざわめき始める。


マクセル「それからしばらく経ちますが新しい就職先は見つかりましたか?」
キロ「いえ、まだ」


マクセル「キロ君、君は仕事を失敗してこの孤児院の顔に泥を塗った。そして、まだ新しい職にも就いていない。現在のキミはとても私たちに利益をもたらしてくれる存在には思えない。今日君をここに泊めることはできない、この意味が分かるね?」


キロ「・・・はい、失礼しました。」
マロ「キロ・・・あたしは・・・」
キロ「マロさん、誘ってくれてありがとう。」






キロは町の外れに移動した。
小さな丘に小さな娘の像が立っていた。


キロ「ここは全く変わっていないなぁ・・・」
使い魔「なんです?ここは」


キロ「これは、100年前に孤児院を創設したカルデラ城のお偉いさんの娘さんの像だってさ
娘さんが失踪して今までの地位と財産をすべて引き払って孤児院を創設したんだってさ。」


キロ「小さい頃嫌なことがあるとここに来てたんだ。なんか安心する。」







中央の広場でぼんやりと眺めていた。

キロ「もう、この町を出よう」
使い魔「いや、悪魔退治はどうするんですか」
キロ「どうかんがえても、そんな雰囲気じゃないだろ!空気読め!」



二人が言い争っているところに
馬車がとまり
執事服に身を包んだすらっとした女のひとがやってきてお辞儀をした。
女の人にはぴょこんと尻尾が生えていた。アクセサリーなんだろうか


「キロ様、使い魔様、我が主があなた方を屋敷でもてなしたいと申しておりますが」


帽子をとるとそこから猫の耳が見えた。

キロ「・・・・はあ?」
身に覚えのない招待にキロは困惑している。
使い魔「キロさん、怪しすぎます。」


「我が主の名は、お金を生み出す悪魔ことケインズといいます。」