オリジナル小説
キロ「悪魔退治はなるべくなしの方向で」
使い魔「すごく儲かるアイデアだと思うんですがねぇ」
・・・・
キロの空腹は限界に達していた。
このあたりは国境付近のへんぴな場所であるので人通りも少ない。
もと別荘地だけあってお屋敷の跡地がたくさんあるが人が住んでいるとは思えなかった。
行く道に煙突から煙の出ている家がぽつんと建っているのが見えた
キロ「仕方ない、食べ物を分けてもらおう」
家の主はカーニさんというおじさんであった。
彼はこのあたりの地主から雇われて、地主の持ついくつかの屋敷の見張りをしているそうだった。
カーニさん「なんだ、旅人か、びっくりした」
カーニさんはなんだか追い詰められたような顔をしていた。
カーニさん曰く
このあたりの屋敷はとても立派ではあるが、辺境で、手入れも悪いということでなかなか買い手がつかないそうだ。
先日、以前のフロッグ家の持ち物であった一軒の屋敷が
あるお金持ちの目に留まり売却の話がまとまりそうだったのに
その屋敷には、ある問題があったそうだ。
キロ「問題?」
すでに無断で誰かが住んでいるそうだった。
出て行ってもらえるように説得したが、交渉は決裂し、大きな黒い化け物に襲い掛かられそうになったそうだ。
そんな虚無滑稽な話を報告するわけにもいかず途方に暮れているそうだ。
カーニさん「私も信じているわけではないが、あの屋敷には噂通り悪霊が住んでいるのかもしれない、信じているわけではないが」
カーニさんの部屋のそこらじゅうに十字架がかけられている理由はそれか・・・
少々のパンを分けてもらってキロはお願いをされた。
無駄かもしれないが、その屋敷に行って立ち退くようにお願いしてきてはもらえないだろうかと
キロ「・・・・まあ、一食一泊の恩義ということで」
使い魔「・・・このパン腐りかけてますね」
見知らぬ旅人に対する礼儀などそんなもの、むしろ何かを恵んでくれるだけ良心的だろう
森の奥にある屋敷はとても大きく立派なものだった。
他の荒れ果てている屋敷とは違い屋敷も庭も丁寧な手入れが行き届いている様子だった。
呼び鈴をならして出てきたのは黒髪の家政婦だった。
どこか影のある容姿であった。
「どちら様ですか?」
キロ「キロ=エバンスと申します。」
「その汚らしい風貌、どう見ても道に迷われたのですね。そんな汚らしいかっこですものそうに違いない」
キロ「・・・ええっとまあ、そんなところではあるんですが」
「まあ、それはお可哀想に、どうぞお入りください。おもてなしいたします。」
おもてなしという言葉につられてしまった・・・
使い魔「とっとと本題に入らないから」
ゲストルームに通されて待っていた。
黒い犬が屋敷の中を自由に行き来していた。
おそらく、ペットなのだろう。
時折、こちらを見ては警戒するそぶりを見せていた。
出された紅茶はとてもいい匂いがした。高級な品なのだろうか
「お待たせしました」
白髪の老人が現れた。
執事服に身を包んで背筋がびしっと伸びていた。
「わたくし、この屋敷の執事長を務めますベルと申します。そちらの犬は主のペットでクロムといいます。」
キロ「どうも」
使い魔「使い魔と申します。」
キロ(それ、名前なのか?・・・)
ベル「あるじの留守中ですので、盛大におもてなしするわけにもいきませんが、さあどうぞお飲みください。」
・・・・・
ベル「近頃はあなたのような旅人さえも尋ねてこなくなりまして、ああ、そうだ。
つい最近来ましたね。この屋敷は自分たちのものだとかぬかす不逞の輩が
私たちは先祖代々この屋敷に住んでいるのに
おかしなひとでした。」
キロ「・・・・」