オリジナル小説

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キロ(どうしよう、説得のタイミングを逃したばかりか、釘を刺されてしまった)



説得の方法・・・
キロが最も不得意とする分野の一つだった。
そうだ話題を変えよう


キロ「・・・この屋敷の主はどんな方なんですか?」
ベルさん「・・・ガルディア侯爵家のリーサ様別邸でございます。とてもお優しくお美しい方でございまして、」


キロ「毎年、夏はこの屋敷で過ごすとかですか?」
ベル「ええ、お暇があるときは季節を問わずこの屋敷に帰ってこられますが・・・そうですね、ここ100年ほど全く帰ってこられず私ども使用人一同はとても心配しております。」




100年って言っただろうか・・・




キロ「お手洗いを借りてもよいでしょうか?」
使い魔「私も」
ベル「ええ、どうぞ、屋敷の庭の奥の突き当りを右です。」



・・・・



使い魔「キロさん、この人たち悪魔ですよ・・・強くはありませんが魔力を感じます。」
キロ「ってことは、100年前に住んでた屋敷の使用人たちが悪霊みたいに取りついてるってことか?」
使い魔「そんなところでしょうね、おそらくとっくに死んでしまってる主のために屋敷の使用人をしているあたりがいかにも悪霊っぽいですね。」


キロ「さて、とっととこの幽霊屋敷からおさらばするか」
使い魔「悪魔を退治して、名を上げるチャンスですよ。」
キロ「いや、もう寿命を縮めたくないから・・・」
使い魔「いいじゃないですか、もう残り少ない命なんですからケチケチしないで」
キロ「ケチケチするわ」



メイドさん「あのー」
キロ「!?」
メイドさん「申し訳ありませんが、掃除をしたいのですが」
キロ「は、はい、すいません、すぐでます」
キロの心臓はバクバクいっていた。



・・・退治はしないけれど
一応説得は、しようかな?
カーニさんも追い詰められてるみたいだったし




それにしても本当に手入れが行き届いている屋敷だなとキロは思った
城の警備兵だったころも城のいろいろな場所へ行ったけれど
まさに完璧な屋敷の手入れ、プロの仕事という感じだった。
ところどころ家具にはフロッグ家と書かれていた。
あれ?たしかベルさんはガルディア侯爵家っていっていなかったっけ?



・・・




キロ「実は、俺はカーニさんに、この屋敷に住んでいるひとを追い出すように言われてきました。」
ベル「・・・・」
キロ「・・・・」
きまずい沈黙



ベル「なんと言いがかりをつけられようが、ここは、わたくしたちの屋敷です。」
黒い犬のクロムが傍らでうううとのどを鳴らして威嚇してきた。
ベル「たとえ何人で説得にこようが無駄ですよ」
ベルさんがぱちんと指を鳴らすとクロムが天井ほどもある大きな犬に化けた
キロ「・・・」
カーニさんが見た黒い化け物はこれか・・・


グルルルルル




のどを鳴らすだけで屋敷全体が揺れているようだった。



ベル「さあ、お引き取りください、でないとクロムがあなたの首からむしゃむしゃと」



クロムは本能的に感じ取った。
キロの心臓に膨大な魔力が蓄積されていることとキロの持つ異質な白い剣を
クロムはこの男の危険性を感じ取った。そして、
突然、ベルさんの制止を振り切ってクロムがキロに襲い掛かった。
ベル「クロム!!どうしたというのです。」



キロは白い剣を取り出してクロムの牙を防いだ。



ベル「クロム!!!下がりなさい!!!」
クロムはびくついてベルの脇に退いた。
ベル「・・・それは、白い剣?対悪魔用の絶対兵器・・・そんなものまで用意するとは
・・・でも、私たちは先祖代々住んでいるこの屋敷を立ち退くわけにはいきません。
私たちは、ガルディア家の執事として、リーサお嬢様の帰りを待たねばならないのです。」



キロ(どうする?斬るか?・・・俺の寿命と引き換えに?・・・・あれ?そういえば)



キロ「ガルディア家、・・・ここはフロッグ家の屋敷のはず、どうして、ガルディア家の使用人が住んでるですか?」
ベル「・・・・」
キロ「・・・・」


ベル「・・・・・・・ええっとそれは・・・それは・・・」
キロ(・・・あれ?困ってる?)
キロ「もしかして勝手に屋敷に住みついただけなんですか?」
ベル「・・・・」



ベル(・・・ガルディア家の屋敷は燃やされたから・・・あの事件のせいで)




・・・・




キロはカーニさんの家に再び訪れた。
キロ「すみませーん」
カーニさん「うわ、びっくりした」
カーニさんの部屋の十字架はさらい増えていた。


キロ「立ち退いてもらう了承を取り付けました。」
カーニさん「本当かね!!・・・あー良かったこれで地主様にも顔向けできる」
キロ「あーそれで代わりにひとつお願いしたいのですが」
カーニさん「???」




・・・・



キロ「この屋敷を使ってよいそうです。」
ベル「こんな大きな屋敷をいただいて良いのですか?」
キロ「あげるわけじゃないですって次の買い手が見つかるまで住まわせてあげるだけですって」
・・・まあ、当分買い手なんてつかないと思うけど

メイドさん「さー掃除をしないと」
犬も前よりも大きな屋敷に喜んで駆け回っている



・・・・




カーニさん「その人たちのために別の屋敷を提供しろだって?
どうして不法侵入した人たちの屋敷を用意しなくちゃならないんだ。そんなことできるわけが・・・」
使い魔「ものは考えようですよ、彼らを荒れ果てた屋敷に住まわせるだけで新築同様にリフォームしてくれるわけですから
・・・これで買い手が増えればあなたにとっても都合が良いのでは?」
カーニさん「・・・・」
キロ(・・・なるほど、うまい言い訳だ)




・・・・




数日後カーニさんの家に手紙が届いた。

『招待状
カーニ様へ
お屋敷に招待いたします。
ぜひいらしてくださいね。
ガルディア家使用人 ベル=モッティ』


カーニさんはこの招待状を見て白目をむいて倒れたらしい。
和解にはまだ時間がかかりそうだった。