オリジナル小説

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100年前



ファナは同じデシベル王直属騎士団でアーシェと歳の近い女性であった。
素早さと身のこなしを得意とするアーシェと怪力自慢のファナは対極の位置にいた。
ファナは、よく自分の夫と娘の話を絶えず、アーシェにしていた。
ファナ「でさ、そのとき、うちの旦那と娘がなんていったと思う?」
アーシェ「はいはい」
ファナ「はーつくづく愛想のない奴・・・アーシェを嫁にもらう男は苦労しそうだなぁ」
アーシェ「私は結婚なんてする気はないわ」



ファナは、モールスの悪魔退治に参加し、白い剣で戦い、戦死してしまう。
訃報はすぐにアーシェにも届けられた。



アーシェは魔女モールスの悪魔討伐に最初から参加していたわけではない。
彼女が参加したのは、デシベル王の直属騎士団が悪魔退治で半分以上が死亡したときである。
アーシェは薄々感づいていた。
この任務に就いたが最後、生きて戻れないことを



大臣「アーシェ!!悪魔の討伐に向かうのだ。」
アーシェ「お断りします。もし、父を将軍の地位に上げてくださるのならば話は別ですが、」
大臣「な、移民上がりが将軍だと・・・」
アーシェ「では、この話はご破算ということで」


デシベル王「・・・待て、飲もうじゃないかその条件・・・」
大臣「ですが、王よ・・・」
デシベル王「黙っておれ」
アーシェ(・・・王は、絶対に約束を破らない・・・)

アーシェ「かしこまりました。王よ。」



私は、死ぬ・・・死ぬことなんて怖くない、父を幸せにできるのなら



・・・・・



俺の寿命はあと一年だ・・・死ぬことなんて怖くない、しっかり仕事をして認められるのなら

月の見える小高い丘でキロは考えていた。



アーシェはキロをずっと監視していた。
キロが悪魔を退治するのを見ていた。
アーシェは胸が張り裂けそうな気分になった。
キロにもうこれ以上、傷ついて欲しくなかった。


その思いだけが、もうキロの前に姿を見せないと決めていたアーシェを動かした。


月光を背にして銀髪の少女が再びキロの前にふわりと現れた。
キロ「!!!???」
キロは白い剣を構えてじっとアーシェの挙動に備えた。
相手は、伝説の騎士。
少しでも油断すれば、一瞬で首をはねてくる達人だ。


アーシェはあまりの警戒振りに少し眉をひそめた。
アーシェ「・・・キロ、もう悪魔を退治しては駄目。」


キロ「・・・?」


アーシェ「あなたの寿命を縮めてしまうわ」

キロ「・・・退治しようがしなかろうが俺の寿命は、
あと一年もたないらしい。だったら少しでも悪魔を退治したほうがいい」


アーシェ「あなたを心配する人だっているわ、自分の命を粗末にしない方がいい」
キロ「俺には、もうそんな人はいないし」


冷静にリアルにそうだ、
孤児院の村の経済を崩壊させて、
カルデラの国の皇太子の妃を暗殺した男を心配する人間が
この世にいるなんて思えない・・・



アーシェ「・・・・」

私は・・・心配だ・・・なんていえるわけがない。
私は、キロの寿命を縮めた張本人だ。
彼を捨て駒にしか見てなかった。
私にキロを愛する資格なんてないんだ。



アーシェは何も言い返さずに去っていった。
キロ「はー怖かった。殺されるかと思った。」
使い魔「ホントですよね」
使い魔は、どこかに隠れていたらしい


去り際にアーシェは泣いているように見えた。
しかし、きっと暗かったので見間違えたのだと思った。



アーシェ(私はキロの命を諦めない。絶対に・・・)