オリジナル小説

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物理先生はすらりと背の高い女の人であった。



初めて会ったのは小学校の時、
大学とかいうところの先生だそうだ。


小学校の先生「いいですか?おかしをあげるなどと言う知らない人に付いて行っては駄目ですよ。」
「はーい」


孝一「今日はぶつり先生のところへいく」
「ぶつり先生?誰のこと?」

孝一「一言でいうと・・・おかしをくれる人」
(えーーー)


「その先生ってイケメン?」 
孝一「うーん、かっこいいかな?」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あ、女の人かぁ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



物理先生「あははは、コブシで壁を壊すだって、それは難問だ。」


物理先生「どうすれば、この問題が解けるようになるだろうか?その解いている状態が楽しいのだからいいんじゃないか?」
孝一「俺は、そんなにマゾヒストじゃない。解けるならば最短ルートが良いに決まっている。」

物理先生(それが、もう何年も毎日壁を殴り続ける男の台詞とは思えないな)


孝一「そいつを見つけ出して直接聞く。」
物理先生「顔も名前も覚えていないんだろう?」
孝一「壁を壊すってことだけは確かだ」




物理先生「それでも、まあ、私が研究者として君にアドバイスできるとしたら、自分で導き出した解答というのはとても意義深く、・・・・気持ち良いものだということだ。」



物理先生「そう思わないかね、レポートを提出しに来た君よ?」
「そ、そうですね」
物理先生「この解答、A君のものに良く似ているようだが・・・」





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電車で20分の場所にある国立大学に孝一と先生は訪れていた。
孝一「どうせなら、自動車で行きたかったな」
先生「やかましい、80点しか取れなかったのに連れて行ってもらえるだけありがたいと思えよ・・」


先生「それよりその箱はなんだ?」
孝一「菓子折りの『異世界饅頭』です。」


先生「異世界?・・・どうして異世界なんだ?」
孝一「さあ?」




ここは、担任の先生の母校だそうで




「げえ、お前は・・・」
担任の先生「教え子に向かってひどいな・・・」



担任の先生「あー水上、この方はとてもえらい物理学の先生なんだぞ」
孝一「物理先生、物理先生」


物理先生「わしは忙しい。早く、その小僧の質問とやらを済ませるぞ。」



・・・孝一は今までの経緯を話す・・・



物理先生「結論から言おう・・・人が素手で壁を破壊するなんて無理だ。」
担任の先生「そこはもっと論理的に言ってあげてください。」

物理先生「仕方ないの」



・・・物理先生 説明中・・・



孝一「全く分かりません。」
物理先生「えーい、やかましい、無理なものは無理なのじゃ」



そのとき、物理先生のトラウマが蘇る・・・

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「○○先生・・・その理論、無理がありませんか?」
「そんなこと絶対ありえませんよ。」

「また、同じことの繰り返しですか」

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物理先生「うぐ・・・まあ、無理と言ってしまうのは簡単じゃ、そこからどう可能にするか考えようじゃないか・・・」

孝一(おお、急に協力的に・・・)




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孝一は大学構内の使われていない建物に案内された。
物理先生「ここはもう使われていないから、存分に殴って構わんよ。なんなら壊してくれてもいい。」


孝一「・・・ここ、いい壁ですね。」



物理先生「・・・・さて、君の見たという現象の再現を始めよう。とはいえ、私が生きてきた中ではそのような現象は見たことも聞いたこともないわけだから頼りになるのは君の記憶だけじゃ。」


孝一「はい」


物理先生「その時起こった事象をできるだけ具体的にどんな些細なことでもいいから思い出して・・書き出してみるんじゃ。」



孝一「あのとき、・・・一瞬で・・・壁が・・・コナゴナに!!」


物理先生「・・・・」
孝一はなんだか思い出せなくて恥ずかしくなってきた。


物理先生「そうだな、それは、君の視覚情報じゃろう。君にはあと4つの測定器官があるじゃないか。例えば音はどうだった?」



孝一「・・・・音はなかった。あんなことが起こったのにほとんど無音だった。・・・そうだ、その時、すごく震えた。周りの空気すべてがビリビリと震えたような気がする。」


孝一「・・・・・・そうだ、もっと震えが起こるように壁を殴ればいい。」


キロは再び壁の前へ駆けていった。


物理先生「・・・」


いや、そんなことでどうにかなるようにも思えないが・・・どうにも私には無理としか思えない。
彼ができると思っている。おそらくこれまであきらめるように言ってきた大人はたくさんいただろう。
それでも彼ができると信じているならば、私は・・・



物理先生「おい・・・あんな小僧を寄越して・・・わしをあざ笑いに来たのか?」

担任の先生「・・・そんなんじゃありません。俺はあの理論 正しいって信じてますから・・・」

物理先生「ふん、まあいい。」



物理先生「・・・この饅頭・・・おいしいな・・・どうして異世界と書いてあるんじゃ?」
担任の先生「・・・・さあ?」




2年後・・・




物理先生の理論は正しいと証明されて認められたという・・・


取り壊す予定だった建物は当時のそのまま残っていた。
その場所にちょこちょこ姿を現す人物がいた。


物理先生「また、お前か・・・」







物理先生「何かヒントになったのならば、何よりだ。ここでもうひとつアドバイスを与えよう。壁を何度か殴った後に必ず、その結果がどうであったか、近づいているのか、遠のいているのか、何が足りないのか評価をおこなうこと。それを徹底してくれ。問題の答えは必ず問題の中にある。だから、必ず原点に立ち返ることを忘れないようにするんだ。」