『新 キロと13匹の悪魔』

『新 キロと13匹の悪魔』



夜半過ぎ、キロは宿に戻った。
もうアーシェも寝ているだろうし、静かに戻らないと・・・



アーシェ「・・・おかえりなさい」
キロ「まだ起きてたのか・・・」

アーシェ「夫の帰りを待つのも妻の務めだから・・・」
キロ「いいかげん、妻ごっこやめないか」


アーシェ「・・・飲まない?」
キロはアーシェの勧めるブドウ酒を飲み干した。
アーシェもグラスのワインに口を付ける。アーシェの顔はやや少し赤みを帯びて色っぽく感じた。


アーシェ「夜遊びは感心しないわね」
キロ「相手は強面のおっさんばっかりだったけどな・・」



アーシェ「・・・・」
キロ「・・・いや、別におっさんが趣味とかじゃないから」



アーシェ「じゃあ・・・どんなヒトが好みなの?」
アーシェはその大きな目をいっぱいに見開いてキロをじーっと覗き込んだ。
キロはアーシェの顔が近いので狼狽した。



キロ「え?えーと・・・・」
キロ(・・・何?この質問・・・どう答えるのが正解なの?・・・)



キロは返答をしぶった。
アーシェは不機嫌そうだった。


アーシェ「ふー・・・どうせ私はミリアさんみたいに可愛くはないけれど」
キロ(ミリア?)


キロ「・・・どうしてミリアのことを知ってる・・・」
キロは動揺を隠せない。



アーシェ「使い魔から・・・彼女はキロの初恋のひとだったって聞いたわ・・・あなたはまだ彼女のことを思っているんじゃないかと思って」



ミリアはキロのカルデラ城警備兵時代の食堂の娘さんで密かにあこがれていた。同期のメガロと付き合っていてキロのことは歯牙にもかけられていなかったという苦い思い出だった。



キロ「別に・・・もうなんとも思ってないし、過去のことなんてもう振り返らないし・・・」
キロは涙目だった。


キロ「・・・俺はもう寝る・・・また明日な」
キロはソファーに寝そべった。

アーシェもゆっくりベットにもぐりこんだ。



アーシェ「キロ・・・その、ごめんなさい、あなたの過去を詮索するようなことをして・・・機嫌直してほしい。」

キロ「謝るなよ・・・俺がいっそう惨めになるから」





アーシェ「お詫びに今夜はベットで寝ればいい・・・よく眠れるように添い寝してあげましょうか?」



キロ「・・・」
アーシェ「・・・・」


キロ「ひとをもてあそぶような冗談やめろ」




++++++++++


エンザ「俺はカルデラの方へ移住して職探しすることにするぜ」
キロ「・・・・そうか」

エンザ「ありがとな、キロ」

エンザ「あーそうだ、お前の妻のアーシェちゃんにもよろしく言っといてくれよ。」
キロ「妻じゃなければ恋人でもないから」

キロ「しいて言うなら、俺が不憫で付いて付いて来てくれている慈善活動家ってところだろうか」




エンザはため息をついた。
エンザ「はー、ないわ、そういうところも全然変わんねーな」



キロ「・・・うるさいよ」



エンザ「傍から見ても彼女はお前に惚れこんでいると思うぜ。あんな綺麗な女性に恥をかかせるなんてお前も罪な男だねぇ」

キロ「・・・」

エンザ「まあ、いいや。お前ら二人の幸せを俺は祈っているぜ」

キロ「だーかーらー」
エンザは笑いながら立ち去った。どこまでも楽天家な奴





++++++++++




キロ(・・・・あと半年でいなくなる人間が、アーシェとどうにかなるなんて・・・馬鹿々々しい・・・)


その頃、
『・・・よく眠れるように添い寝してあげましょうか?』
アーシェ(・・・私・・・なんて大胆な事を・・・・)

アーシェは酔いが冷めて恥ずかしがっていた。