はたく
大海さん『はたく』レポート
『はたく』
孝一君が壁を殴って開発しているという技
原理はよくわからないけれど
長く付き合っているとその技の性質みたいなものに気づくことがある。
○振動について
夜寝ているとビリビリと振動を感じることがある。
これは孝一君の調子のいい日に重なることから壁を揺らした振動が届いているものと推察される。
最近はご近所の人も慣れっこになっていることが恐ろしい。
○人体に与える効果について
【気絶効果】
はたくをまともに食らうと気絶する。
はた目にはすやすや幸せそうに寝ているように見えるらしい。
壁を殴る孝一君自身もたまに壁の前でうなだれてすやすやと眠っていることがある。
つまり、技が成功したときの反作用で彼自身もはたくの気絶効果を何度も食らっているのだ。
必ず寝るわけではないのは体が慣れてきているからだろうか?
【記憶喪失効果】
これはまだ立証できていないけれど
はたくで気絶した人物は前後の記憶がほとんど残っていない。
これは過去の被験者の傾向から見ても明らかだろう。
この効果は孝一君にとって残酷である。
技の完成→気絶→記憶喪失なのである意味一生完成しない技かもしれない。
あたかもそれは地獄の河原で石積をするごとく
いつもの日課の道場の掃除を終えて・・・
大海「水上君、今日は私に『はたく』を打ち込んでみて」
孝一「は?」
大海「さあ、遠慮しないで(記憶喪失効果の検証を・・・)」
孝一「いや・・・遠慮するだろふつう・・・」
大海「痛くしても大丈夫」
孝一(ええ・・・)
孝一「じゃあ・・・」
大海「・・・・」
孝一は大海さんのお腹にゆっくりと拳を打ち出す。
もちっ
孝一「やわらか・・」
大海「・・・・・・今、やわらかいってつぶやいたでしょ」
孝一「ち違う、別にそういう意味じゃなくて」
大海さんの投げはいつもより鋭かった。