ウツロ 未知との遭遇

ウツロ 未知との遭遇



近い・・・



どんな魔獣だろうか・・・
見た瞬間死ぬことも一応覚悟しとかないとな・・・
メデューサなどは目が合った瞬間石になるらしい)
心臓の鼓動が聞こえる・・・意を決して木の陰から奴を見る。



そこに居たのは・・・直径3mほどの巨大スライムだった・・・



そうきたか・・・
もうちょっとワーウルフとかオーガとかフォルムのカッコいい奴が良かったな・・・


しかし、
長年スライムを見てきたけどこんな個体初めて見る・・・
どういう原理でこうなったんだ?
まあ、いいか、初遭遇の個体だ。念写して応援要請して今日の仕事は終わりっと





巨大スライムは周囲の枝をバキバキ折りながら人の歩く程度の速度で移動する。


ウツロは魔法の書をスライムに向けて念写した。できた画像を確認する。
うーん、上手く撮れたけど・・・巨大具合が伝わり辛いかも・・・『これ単なるスライムだろ』ってツッコまれそうだ。

一番いいのは俺が横に並んでツーショットを撮影することだけど・・・



ウツロ「難しいよな」



巨大スライムの体の外壁に小波が立つ・・・



ひゅん



ウツロはとっさに剣を構えて受ける。
スライムの体の一部がレーザービームみたいに伸びてきた。
間合いは10mほど・・・威力は思いっきり棒で突かれた程度・・・怖



ウツロはスライムから距離をとる・・・
とりあえず、エレノールさんに画像と応援要請を送った。
村人にはしばらく森に近づかないように言っておくか・・・




巨大スライムの様子が変わる。




急に移動速度を上げていく・・・追いつけない




なんだ?・・・そっちは村の方・・・なんで急に・・・
村に近づくと、微かに子供の声が聞こえてきた。
そうか・・・声に反応して・・・


スライムを追って、森の外に出た。
子供の悲鳴が聞こえる。


子供のひとりがスライムに飲まれているのが見えた。
子供が悲鳴をあげる。
「きゃあああああ」


ウツロは叫ぶ。



「奴は声に反応する、声をだすな、静かにここから離れろ」



ウツロの声の方が大きかったのか、レーザー攻撃はウツロの方へ向いた。なんとか剣で受けきる。
ウツロ「つつっ」


子供たちは悲鳴をあげつつ後ずさる。パニックになっているようだった。攻撃対象は子供に移る。
攻撃が通るか微妙だけど、出し惜しみしてらんないか・・・



コアの動きをよく見て・・・
ウツロは巨大スライムに剣を突き刺して、魔法を発動する。



【風切り 変則技 鳥串】
突き特化技
斬撃を飛ばす風切りに比べて攻撃面積が小さくなるが突き方向の威力が上がる。



ギリギリ急所に届いたようだ。
巨大スライムが溶けて水たまりに変わる。子供の息はあるようで一安心だった。





その後の事後処理は大変であった・・・
応援要請して自分で倒すのは評判下げるなぁ・・・


しかも、




巨大スライムを討伐したことで
魔法協会での『ミスタースライム』の知名度がさらに上がったらしい。
嬉しくない・・・




村人との仲は変わらず険悪であったが、
村を去る時、ひとりの子供がこっそりお礼を言ってくれた。

「ありがとう・・・スライムのひと」
なんとも複雑な気分だった。




仕事の愚痴は酒場で




$$$







ウツロは拠点の街に戻り、下宿屋の1階の酒場でお酒を飲んでいた。



ウツロ「ぷはー」



ウツロはジョッキをテーブルに置く。
(相変わらず、全然減ってない・・・)
ウツロは酒に弱いのでいつもジョッキの半分しか飲めない。
しかも、その量を飲むと二日酔いになってしまう・・・



「ウツロさん、やけ酒ですか?」



ウツロ「ああ・・・今回は、真面目に仕事をしたのに、こっぴどく絞られた・・・真面目に仕事をしたのに」
(ああ、ウツロさんとしては そこ は許せないのか・・・)



『最初に子供にしっかりと注意できていればこんなことには・・・』
『上位個体に一か八かで挑むなど・・・自覚が足りなすぎる。』
『初見の上位個体は何をしてくるかわからないのだぞ?結果倒せたから良かったものの・・・』
『飲まれた子は見捨てて、残りの子供と村人への注意喚起を優先すべきだった。あのときお前が死んでいたら、さらに被害が拡大していたぞ。』



あんまり、愚痴をこぼすのもかっこ悪いな、何より意味がないし面倒だ。
勘定を置いて店から出る。



「ああ、小指の関節ほども減ってないですねお酒」
「まあ、奴はカッコつけて飲んでるだけだからな・・・」



ウツロはベットに倒れこむ



ウツロはベットの中でまどろみながら思い出す。

村人との仲は変わらず険悪であったが、
村を去る時、ひとりの子供がこっそりお礼を言ってくれた。

「ありがとう・・・スライムのひと」


感謝してくれたひとがいた。
それだけで、『それはいい仕事だった。』そう思うことにしよう。
スライムのひとっていうのは少し複雑だけど・・・