お酒が弱いミラ その2

ミラと野宿




夕刻、
ウツロは北支部の街ミストクラノスに帰ってきた。



ゴーン、ゴーン



教会の鐘が鳴る・・・
正教会・・・そういえば昔こんなことがあったな・・・
正教会の規律では神父とシスターはお酒を飲むことを禁止されていた・・・しかし、ウツロはシスターさんが夜にこっそりお酒を飲んでいる場面を目撃してしまったことがあった・・・


さぞかし気まずい雰囲気になるかと思えば・・・そうでもなく・・・


「・・・まぁ、シスターにだって飲みたいときもあるんだよ。」


『むしろこっちが理解していない』みたいな感じになったことがあったな・・・ずっと昔のことだったけれども




俺はミラに『お酒を飲むな』と酒を禁止した・・・ミラだって飲みたいこともあるんだろうか・・・いや、俺が何かを禁止すること自体おこがましいことだったかもしれない・・・そんな権利どこにもないのに・・・(近隣の居酒屋を更地にしないという名目なのだが・・・)




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数日後、
ミラとふたり辺境の魔物討伐の帰り、
予想以上に時間を食ってしまった。


ウツロ「・・・仕方ない、今日はここで野宿するか・・・」
ミラ「・・・え・・・野宿ですか・・・」
なんだろう その期待に満ちた目は・・・



野宿と言っても旅人用のボロ屋に泊まるんだけれども・・・



ぱちぱちと燃える火・・・見てると眠くなってくるな・・・
野宿が珍しいのかミラのテンションはいつも以上に高かった。



ミラ「なんだか、ドキドキしますね・・・歌を歌う、ダンスを踊る、弦楽器で弾き語りをする、切ない話をする・・・どれをするか・・・迷いますね先輩!」
寝たい・・・



それにしても・・・今日はいつもみたいにべたべたひっついてこないな・・・
ミラ「・・・私・・・汗っかきなので・・・汗臭いと思われたくないんです・・・」
いつもそのくらい慎ましい方が良いんだけど・・・



ウツロ「ああ・・・そういえば・・・」
ミラ「?」



ウツロ「ミラ・・・ほらお酒だ。」
ウツロは鞄から小さな瓶に入った葡萄酒を取り出す。


ウツロ「その・・・いつも飲めなくて辛いだろうからな」



ミラは嬉しいのか目をキラキラさせながらその小瓶を眺めている。



ミラ「・・・ウツロ先輩・・・大好きです。」
すごく幸せそうな顔で微笑みかけるミラ・・・
な・・・そこまでストレートに言われると恥ずかしいな・・・うう
ウツロは緩みかけた顔をなんとか戻した。



ウツロ「・・・今日は周辺を更地に変えても大丈夫だぞ。」
ミラ「ヒトの事を爆弾みたいに・・・ひどいです・・・」



とくとくとお酒を注ぐ、お酒の香りがあたりにひろがる・・・
ミラはごくりと息を飲んで、まじまじとコップに入ったお酒を見つめる・・・



ミラ「これ・・・本当に飲んで大丈夫ですかね?」
そんなこと言われると俺も不安になるだろうが・・・いいから はよ 飲め



ミラ「・・・」



ミラ「覚悟を決めました・・・ウツロ先輩・・・きっとまた明日会いましょう・・・」
不吉なことを言うなよ



ミラはおそるおそるお酒を一口飲んだ。
ウツロは剣を構えて臨戦態勢をとる。

なんともなさそうだな・・・二口、三口、少し頬に赤みが刺して目がとろんとしているがいつも通りだ。なんだ案外大丈夫そうだな・・・ふう良かった。


ミラ「ウツロせんぱいも〜のんでくださいよ〜」


ここまで楽しそうだと俺も飲みたくなってきた・・・
ウツロも瓶の酒に少し口をつける。
ウツロ(おお・・・この酒おいしいな・・・適当に買ったけどあたりだった・・・)



ミラ「すきあり〜」


ミラはウツロにのしかかってマウントポジションをとる。
やわらかい感触と甘い匂いが一層強くなってクラクラする。
しまった油断した・・・


ウツロ「いいから離れ・・・うぐ」
唇を奪われるウツロ・・・


声にならない声をあげる・・・


唇が離れる・・・ミラの顔がすごく近い・・・ミラの大きな丸い目が綺麗だった・・・服の胸元が少しはだけている・・・ミラの体のラインを想像すると余計に恥ずかしくなった。




ミラのトロけた顔が甘い声でささやく・・・
ミラ「ウツロ先輩・・・先輩の初めてを・・・私に下さい・・・」




な・・・な・・・俺は初めてじゃないから!・・・えーっと・・・ないから!




どうする・・・どうすればいいんだ・・・駄目だ・・・俺にはエレノールさんという心に決めたヒトが・・・
※顔も名前も知りません



服をぐっとつかむミラ


ミラ「兄ちゃん堪忍せぇや・・・」
ウツロ「や-め-て-」




翌日




ミラ(あれ・・・記憶がない・・・)


ミラ(ウツロ先輩?)


着衣の乱れを直すウツロ先輩・・・


ウツロ「ミラ・・・昨日のことは忘れろ」


ミラ(何があったんだろう・・・)
そして、その日ウツロ先輩は私と目を合わせてくれなかった・・・