【魔法協会創設編】お泊り


【魔法協会創設編】お泊り




それから2か月後・・・
アルザスは私の屋敷に暮らすようになった・・・





初めてアルザスに出会ってからすぐに
魔法博士ワーグナーは亡くなった・・・

元々病に臥せっていて・・・先が長くなかったらしい。




今日は屋敷にアルザスが来る日だ・・




最初、
私はアルザスを『男』だと思っていたので、
距離を置いていたというか緊張していた・・・



叔父「アルザスお風呂に入って来なさい、・・・アクアローナも一緒に入って勝手を教えてあげなさい」



・・・は?


え?・・・え?・・・どういうこと・・・
男女がいきなりお風呂に入れっておかしいでしょうに・・・
世間ではお嬢様はそういうことに無知なのかもしれないけど
私は・・・そうでもないんだから・・・うう

いくら私がアウディーネ分家の3女だからって扱いが雑過ぎる・・・




アルザス「お嬢様は・・・服を脱がないのですか?」



・・・
アクア「今日は脱がずに入りたい気分なのです・・・」
にこりと笑う・・・
ああ、いいわけ苦しいな


とはいえ・・・体を洗ったりするには・・・
アルザスの裸を見なければならない・・・ドッドッドッ
速くなる鼓動・・・


服を脱ぐアルザス・・・
顔だけでなく・・・全身が傷だらけで、痛々しい縫い目がたくさんあった・・・



・・・



・・・ん?



・・・あれ・・・ついてない



アルザスは女の子だった。
叔父や家族は最初から知っていたらしい・・・
私一人暴走して馬鹿みたい



「どうしたんです?うずくまって」
「少しだけ放っておいて・・」





$$$






その晩・・・
アルザスは夢を見る・・・

在りし日のワーグナーの事だ。



たった一度・・・



綺麗な月夜の晩にだけ・・・
自らの今はもう存在しない故郷の事を話したことがある・・・


リムガントから東に位置する小さな村・・・
妻と息子と息子の嫁と孫たち・・・
魔法の研究ばかりすると妻からは呆れて叱られる日々・・・
でも欠かさず弁当だけはこしらえてくれた・・・



初夏・・・
オレンジのたくさん実る季節・・・
家族全員で食べる食卓・・・

それは幸せだった・・・




「魔獣を殺せ・・・魔獣を殺せ・・・殺すんだ・・・殺せアルザス!!」
「ラグベールの蛮族どもをひとり残らず・・・殲滅するんだ・・・アルザス!!」




アルザスは目を覚ます・・・
すごい汗をかいていた・・・


「どうしたの?アルザス?」


となりで寝ていたアクアローナが目をこすっている・・・


「なんでもないです」



目の前の可愛らしい少女に笑いかけつつ・・・
アルザスは再びシーツに包まった。









アルザスは・・・強かった。



あの猫が好きなんだ・・・この顔じゃあ怖がられて、しまうけど



その猫は不細工で無愛想だわ



なんというか・・・そこがたまらなく愛らしいというか・・・

ツンとデレの素晴らしいバランスというか・・・

想像の余地がある・・・そんな感じ・・・わかるかな?



何を言っているか、全くわからないわ・・・




ふふふふ・・・



あなたはとっても変わってる・・・おかしい人・・・




サリアはいい仲間になる・・・私のセンサーがそう言っている

壊れているんじゃないかしら、そのセンサー・・・




西の国の

ツンデーレ信仰というのがあるんだけど・・・


嫌いの感情を『ツン』

好きの感情を『デレ』


と呼び、生涯をかけてその『黄金比』を見つけることに専念する密教なんだ・・・


いずれその境地『モエ』に到達するために