大ヒット御礼レベルアップ本

大ヒット御礼レベルアップ本





『実は存在したレベルアップ』





最近、ひっそりと話題の書物のタイトルらしい。

魔法協会学術機関の最新の報告文によれば
『レベルアップ』というような現象は否定的な見方が強い。
この本の内容もやんわりと『レベルアップを否定する内容』で面白くもなんともないそうだ。
タイトルの勝利という奴だろうか



でも、もしかして・・・
もしかしたら・・・レベルアップはあるかもしれない・・・
そんな淡い希望を抱く人が多いのだろうか・・・
・・・ああ、人の心はかくも弱い




所変われば・・・
西の国では今現在であっても、『レベルアップ信仰』が根強く残っており、
『レベルアップ祈祷師』も ちゃんと商売として成り立っている。
まぁカルロは『詐欺師』と断言していたが


そうえいば『レーベル婆さん』・・・
彼女はレベルアップを信じ込ませるために『補助魔法』まで使っていたな。


『補助魔法』はここクラスティア王国であっても使える者は多くない。
特に他者に付与できる者は貴重である。
『回復魔法』と同様、他者の体に良い作用を与えるのは、とても繊細な技術を要求されるからであるそうだ。




『補助魔法』を使えればどこの国でも重宝されるだろうに
そんなものをレベルアップのダシに使うなんて・・・あのお婆さんは何を考えているんだろうか・・・とんでもなく『変わり者』であることは間違いない。




今になって
あのお婆さんは実はすごい人だったのではないだろうかと考える。
今頃、彼女はどうしているだろうか・・・生きているかもわからない・・・





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支部の昼休み中、
ミラが駆け寄ってくる・・・


ミラ「ふふふ・・・ウツロ先輩・・・今日の私にドキドキしませんか?」


ウツロ「?」



ミラ「実は昨日・・・レベルアップして『恋愛力』のステータスが上がったんです」



レベルアップ?
ステータス?



ミラに事情を説明する。
ウツロ「・・・というわけで・・・レベルアップ祈祷は西の国で有名な詐欺だぞ」


ミラは涙目になる。
ミラ「どおりで・・・ウツロ先輩の目がいつも通り濁っていると思いました」
どさくさに紛れて 俺 貶められてない?




ケーリー「きゃ・・・」





書類の束が机から落ちる。
ケーリーさんの顔がなんだか青い・・・
まさか・・・




ミラ「・・・レベルアップ祈祷師のレーベルさん・・・信じてたのに・・・」
しかも、本人かい

















レーベル婆さんは意外に近くにいるようだった。
まだ、生きていたんだな あの妖怪婆さん・・・



ミラ「ミストクラノスの市でレベルアップ祈祷師のレーベルさんにレベルを上げてもらいましたッ」



よく言われる『ステータス』などという物も現代においては否定的な見方が強い。
『力』を上げるなんて一言で言っても、腕力、脚力、色々あるし、
もっと大きな問題は『誰が』『何を基準に』決めるかである。
クラスティア王国では過去に『ステータス』の一般基準を決めようという試みもあったそうだが、
皆が皆、自分の利益になるような基準を主張したためまとまらず、かろうじて決まった基準も
『テストのための勉強』みたいになってしまい、実態と合わないので廃止になったらしい。







どうしてそんなに詳しいかって?
ああ・・・言えない・・・
『楽して強くなる方法』を探るためにその手の報告文を読み漁っていたなんて・・・




俺が付与してもらったのは
『魔力自動回復オートマジック』という魔法だったかな・・・
そんな魔法はクラスティアの書庫にも記載されていなかった・・・











太古の勇者や英雄がある日突然強くなったなどという伝承は
『魔力臓器からの魔力供給がスムーズになっただけ』という説が一般的であり
魔力の根源がよくわかっていなかった時代の知識不足だったそうだ
なんという夢とロマンのない話だろうか・・・


そんなわけで、しっかりと差が見れて、簡単に測定できる『魔力』が現在のクラスティアでは一般基準となっているわけだ。