黒峰 『vsゴリ沢』

『vsゴリ沢 その1』





「お前ら、戦いの前だ!!昼めししっかり食べとけよ!!」




サッカー部部長のゲキが飛ぶ。
張り切ってコンビニおにぎりを頬張るサッカー部員たち
「ああ、そうだな」
「午後からは、黒峰にとってさらに厳しい戦いが待っているはずだ」
「そう、俺らが支えてやらんとな」
「おっしゃー!!気合い入れるぜ!!」


(なんで、ウチのサッカー部がここに?)
困惑する白鳥の応援に来ているテニス部員たち・・・




コート裏の観客席から真剣な声が聞こえる。





「西本さん・・・入学当初から好きじゃった・・・どうか俺と付き合ってくれんか」





地味目の背の低い女子に頭を下げる大男
困惑した女子は後ろを向いて逃げて行ってしまった。



偶然にその姿を見てしまったサッカー部員たちは困惑する。
「うわ、告白現場みちゃったよ」
「・・・あれは次の黒峰の対戦相手の『ゴリ沢』だな」
「!?・・・おお流石部長、事前の情報収集も万全だな」

「ふふ、既に奴のプロフィールからテニスの癖の細かいところまでリサーチ済みだ」
「おお、その情報はもちろん黒峰に教えてあげたんだな」


「いや、言ってない」



「は?」



「俺は、あいつとそんなに仲良くないし・・・ごめん、勇気出なかった」


(なんでだよそれ・・・俺ら・・・もしかして黒峰にとって単に迷惑なだけの野次馬じゃね)






$$$






都大会2回戦、「五里沢vs黒峰」
現在、1−3黒峰リード


(相手・・・勝手にミスしてくれるな・・・)


ゴリ沢の代名詞のフラットショットがフェンスに突き刺さる。
大幅にラインアウト・・・

ゴリ沢は明らかに集中を乱していた。
過去白馬と並んで全国常連だったが、故障により、ランクダウンした。
これが事実上の復帰戦であったため周囲は故障明けの調整が不十分なのだと解釈していた。



「これさ・・・どう考えてもさっきの告白が原因じゃね?」
「・・・ゴリ沢には気の毒だが、勝負の世界は厳しいからな」
「そうそう、ラッキーじゃん」

「なんか後味は悪いけどな」

「だが・・・ゴリ沢のあがく様を見ていると・・・少しゴリ沢を応援してやりたい気もしてきたな・・・」

(部長・・・何言ってんだよ)




黒峰が次のポイントに王手をかけた時・・・事態は動く。





「五里沢君!!!私も・・・ずっと前からあなたの事が好きだったの!!!・・・だから、頑張って!!!」





地味目の背の低い女子の叫ぶ声・・・
サッカー部員たちに戦慄が走る・・・

ここから形成が・・・逆転する・・・







俺は・・・腑抜けじゃない!!!



「そういや、黒峰、一回戦突破したらしいな」
「おおすげえ・・・まぁ次の『ゴリ沢』は流石に無理だろうけど」
「もしかしたら、『ゴリ沢』に勝って白馬と全国かけた勝負になるとかあったりしてな」
「いやいや、流石にねーだろ」
「だよな・・・ははは」




サッカー部員たちは・・・ボロボロと涙を流す。
黒峰・・・なんて顔・・・してんだよ・・・


馬鹿野郎・・・


俺たちはそんなお前を見たかったんじゃないんだよ


フェンスにしがみついてサッカー部員は次々叫ぶ。


「黒峰!!!頑張れよ!!!俺たちはお前のこと応援してるぜ!!!」
「ああ!!そうだ!!!」
「頑張れ黒峰ーーー!」




黒峰は・・・ため息をつく。


意味わからんけど・・・ちょっと冷静になるか