魔法学校一日臨時講師をした時の事
なぜ突然こんな仕事を仰せつかったのだろうと困惑した。
しかし、今俺はリムガント魔法学校に来ていた。
怪我した誰かの代役らしいが、
こんな俺に教える事なんてあるだろうか
あるとすれば『社会の厳しさ』だな
魔法協会がいかに剣士に対して辛辣で塩対応か、いかに夢と希望のない毎日を送っているか
この純粋な目をした子供たちに社会のリアルを語ってビビらせてやろう・・・くくく
「くれぐれも魔法協会に対するネガティブな印象を与えない様にお願いしますね」
きつく釘を刺された。
ふ・・・愚かしい。
このような教育内容の印象操作こそが『3ヵ月で辞める新人』を作り出してしまうのではなかろうか・・・まぁ従いますけど!
教壇に立つ。
「ええ・・・急遽代理で来られた、魔法協会の剣士ウツロ=ハイイロさんです」
まばらな拍手
「ええ、クラフトさんじゃないのかよ」
「誰?この人」
すごく残念そうなヤジが聞こえる。
「・・・ウツロさん」
おお、ひとりだけ知り合いがいたか。
たしか『エマ』って名前の女の子だったか。
ここに居るってことは魔法学校の入学試験受かったんだなおめでとう
授業が始まる。
低い俺の声・・・
ただ教科書の字ズラを追う・・・
開始5分で眠る者が現れる・・・というか俺自身眠く・・・
「先生!!」
エマが手を挙げる。
「その…あの…」
「トイレか?我慢せずに行ってこい」
「違います!!」
エマはこっちに駆け寄って、耳打ちする。
「ウツロさん…ただ教科書読んでるだけだったら、魔法協会の先輩に来てもらっている意味ないじゃないですか!!」
「そんなことを言ってもだな・・・教える内容はこの教科書に分かり易くまとまっているんだが・・・それはもう感心するほどに」
「何を言っているんですかウツロさん・・・現魔法協会員だったら、いきなり教科書をバンと床に叩きつけて、『こんなもんで学んでいるからお前ら駄目だんだよ!』くらい言うべきです」
・・・何その怖い人
「ああもうやってらんねぇな!!」
突然怒り出す。クラスの男子たち
「こんな弱そうな魔法協会員に教わることなんて何もねぇよ!!」
「確かにウツロさんは弱そうに見えるけど、実際強いわ、村で何度か助けてもらったし」
確かに…弱そうに…見える…くふ
「エルバなんて、ウツロさん以下よ!!」
「俺がこいつ以下・・・だと・・・」
涙目になるエルバという名前の男子
・・・本気で泣くのやめろ
・・・なんとも、エマ=ワトソンという辺境の少女は結構人気があるようだった。
・・・ふふ若いな
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という訳で学内の魔獣討伐演習場で決闘をすることになった俺
この学内の森は実際に魔獣が放し飼いにされているらしい。
ルールは先に魔獣を1体討伐した方の勝ち
「エルバは1年なのに『マタンゴラン』を討伐したこともあるんだぜ」