オリジナル小説

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それはとても奇妙で恐ろしい光景だった。
キロと使い魔以外のまわりの人々が後ろ向きに歩き始める。
落ち葉が元の木に帰っていく。
カルデラ全体の時間が巻き戻っていく。



アーシェ(・・・お父さん、お父さん、・・・今助けてあげる。)
アーシェは大地に両手をあてて、空を見上げながらひたすらに大地に魔力を注ぎ込んだ。


キロ「アーシェ!!!」
アーシェは美しい銀色の髪が鈍い色になり、目がらんらんとして恐ろしい形相だった。
アーシェはキロを見た。
アーシェ「・・・・・どうして来たの?」



どうして、ここへ来た? 
助かりたいならば遠くへ逃げればよかったはずだ。




キロ「何をしている?」
アーシェ「この国の時間を100年分巻き戻しているの」
キロ「・・・そんなことしたら・・・」
アーシェ「そんなことをすれば、100年間の間に生きた人々の存在を抹消することになるわ。でもそれは100年間この国の歴史が遅れるだけ、100年後にはすべて元通りのはずよ。」




アーシェ「あなたが12匹の悪魔の魔力を集めてくれたおかげで、100年前に帰ることができる感謝しているわ、」

キロ「・・・つまり、今まで、・・・死ぬ思いで、死にそうになりながら、たくさんの人を不幸にして悪魔を退治したこと全部全部、この国を滅ぼす手伝いだったってことか。」



アーシェは眉を歪ませた。
アーシェは辛かったのだった。
キロが死ぬ思いで、悪魔退治するのを見るたびに心が痛んだ。
そして、悪魔を倒すことで不幸になった人々に対して大きな罪悪感を持ちそれに苦しんでいることも知っていた。
アーシェの最終目的はキロの善意をすべて踏みにじる行為なのだから





アーシェ「関係ないじゃない。
あなたは、自分さえよければいい人間だったでしょう。
そして、周りもあなたを必要としていない。
誰も元同僚のあなたの処刑を止めないなんてどうかしてる。
もう、あなたはこの国にはいられない。じゃあ、この国がどうなってもかまわないでしょう?」



キロ「・・・確かに俺がこの国を救って喜んでくれる人間なんていない。」
アーシェ「・・・」





キロ「首にされて・・・処刑もされたけど・・・帰りたい場所なんだ。」





アーシェ「・・・無理ね・・・この国はもうあなたを必要としていない。」

キロにもう戦う理由はなかった。
依頼主は目の前にいるこの娘なんだから・・・
この国との関係はとっくに切れてしまっているのだから・・・

自分と関係ないものを守るほど余裕はないし、正義なんて偽善のために行動することなんて考えたことがない、ここで勝ったとしてもカルデラのみんなから祝福と称賛をあびるなんてありえない。





キロ「それに・・・愛される悪魔が言っていた、お前は、悪魔なんだってな。」
アーシェ「魔女モールスが呼んだようにいうなら”時間を巻き戻す悪魔”ってところかしら」
キロは白い剣を構えた。



キロ「悪魔なら・・・退治するだけだ。」





アーシェは静かに魔術を停止して、その場に落ちている剣を拾い上げた。


どれだけ戦果をあげても父は喜ばなかった。
報われない戦いを繰り返す・・・キロは私にそっくりだ。
・・・だからこそ私はキロも助けたかったのに・・・



アーシェ「・・・邪魔をするのならば容赦はしない。これでも王直属騎士団のエース、腐ってもあなたごときに遅れはとらないわ。」