オリジナル小説

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感情は必要なものか?
いや無駄なものだ、必要のないものだ。
感情は、人の合理的な判断を鈍らせる邪魔なものだ。


若きシスター、ストレアは考える。



その町のシスターはちょっとした評判になっていた。

彼女に相談しに行った者はいままでと違う人間になって帰ってくるそうだ。
アルコール中毒の男は、真面目に働きだしたそうだ。
ひどい振られ方をした女性は、もうそのことを忘れたように涼しい顔をしている。
ヴァイオリンのコンクールで落選した少女は、今では第一線で活躍している音楽家になった。



・・・・



使い魔はみっともない旗を背負っていた。
『悪魔祓い請け負います』
これは、ロックさんのお手製だった、もういらないというのでもらってきたのだった。


町の人はキロを危ない人のように距離をとった。
キロ(・・・ああ、想像以上に浮いてるなぁ)






キロはこんな宣伝で依頼が来るわけないと思ったけれど
お昼に食べた定食屋の伝票と一緒に
「今夜、酒場に来てください、ご相談したいことがあります」
というメモを渡されたのだった。
定食屋の店員はとても暗い顔をした女性だった。




キロは言われた通り酒場で待つことにした。
キロは何となくそわそわしていた。
キロ(おお、なんか大人な感じ)

使い魔「夜の酒場に女の人に呼び出されるなんて、期待しちゃいますよね、はっ」
キロは使い魔の鎌首をつかんだ。
キロ「なんだ、今のはって」



・・・・・




女性は暗い顔をして話し始めた。
話を要約すると
彼女の友人は最近事故で夫を亡くしたそうだ。


毎日、毎日、夫の墓に出かけては泣いて、出かけては泣いてを繰り返したそうだ。
そんな姿を見かねて、
評判の町のシスターに相談に行くように勧めたそうだ。
相談に行った日を境に彼女は変わった。


慰霊祭にさえ墓参りに行かなくなった。さらに、彼女はこういったそうだ。
「死んだ人間に時間をかける意味はない」と

女性「ナラがそんなセリフを言うわけがない、彼女がどれだけ夫を愛していたか私は知っているもの。町のシスターはとてもいい相談役と評判だけど何かおかしい」




使い魔「・・・・」
キロ「・・・・」



キロ「むしろ良かったじゃないですか、悲しみに囚われてばかりじゃ前に進めませんし」

キロの人生の中で女の人と話した記憶などあまりないし、
まして、口論になったことなどほとんどないが、
このセリフをきっかけに口論になってしまい交渉は破談になった。


使い魔「キロさんって最悪ですね」
キロ「言いたいように言って・・・・」