オリジナル小説
物理先生講座その2
物理先生「・・・・さて、君の見たという現象の再現を始めよう。
とはいえ、私が生きてきた中ではそのような現象は見たことも聞いたこともないわけだから
頼りになるのは君の記憶だけだ。」
孝一「ああ」
物理先生「その時起こった事象をできるだけ具体的にどんな些細なことでもいいから思い出して・・書き出してみるんだ。」
孝一「あのとき、・・・一瞬で・・・壁が・・・コナゴナに!!」
物理先生「・・・・」
孝一はなんだか思い出せなくて恥ずかしくなってきた。
物理先生「そうだな、それは、君の視覚情報だろう。君にはあと4つの測定器官があるじゃないか。例えば音はどうだった?」
孝一「・・・・音はなかった。あんなことが起こったのにほとんど無音だった。・・・そうだ、その時、すごく震えた。周りの空気すべてがビリビリと震えたような気がする。」
孝一「・・・・・・そうだ、もっと震えが起こるように壁を殴ればいい。」
キロは再び壁の前へ駆けていった。
物理先生「・・・」
いや、そんなことでどうにかなるようにも思えないが・・・どうにも私には無理としか思えない。
彼ができると思っている。おそらくこれまであきらめるように言ってきた大人はたくさんいただろう。
それでも彼ができると信じているならば、私は・・・
物理先生
「何かヒントになったのならば、何よりだ。
ここでもうひとつアドバイスを与えよう。
壁を何度か殴った後に必ず、その結果がどうであったか、近づいているのか、遠のいているのか、何が足りないのか評価をおこなうこと。
それを徹底してくれ。
問題の答えは必ず問題の中にある。だから、必ず原点に立ち返ることを忘れないようにするんだ。」