はたく
中途採用の非常勤講師、テスラ=エレマーレ先生
彼女の噂はすぐに高校中に広まった。
「金髪美人でスタイルもモデル並み・・・私もあんな風になれたら・・・」
「すごい大人のエロスだよな・・・」
「正直大海さんもいいけど・・まだ子供っていうか・・・やっぱり、テスラ先生だよな・・・」
風切さんは気が立っているようだったが、大海がそれをなだめる。
(これでやたらに注目されることもなくなったし良かった・・・私を気にしてくれる人は一人で十分だもの・・・)
「コーイチ、おはようございます。今日もいい天気デスね」
テスラ先生は孝一の頬を指でつっつく。
大海さん「!?」
大海「・・・水上君・・・おはよう」
孝一「おはよう・・大海」
大海「・・・・あの・・・・テスラ先生とは・・・どういう関係?」
孝一「まあ、知り合い?・・・和菓子屋で日本語が通じず、困っていたところを通訳したんだ・・・」
テスラ先生(・・・・通訳?しましたっけ?)
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放課後、
孝一が下校しようとすると校門のそばに人だかりができていた。
テスラ先生が大きな二輪車に乗って誰かを待っているようだった。
テスラ「おお、コーイチ、待ってましたよ。さあ、一緒に帰りましょう。」
周りの生徒がざわつく・・・孝一は居心地が悪かった。
ふと見ると豆太が涙いっぱい溜めてこちらを見ている。
孝一「・・・豆太?」
豆太「今の俺を見るんじゃねぇ・・・今俺は嫉妬の炎に焦がされているぅううう」
などと叫んで走り去ってしまった。
テスラ先生は煽情的な黒いスーツで孝一にヘルメットを渡す。
少し前は はだけて テスラ先生の豊満な胸が見え隠れする。
バイクは速度を上げていく、孝一は後ろの座席に乗って必死にしがみつく。
孝一「おい、速度出し過ぎだろ」
テスラ先生「ビビってるんですか?ほら、もっとしっかりと私にしがみつかないと振り落とされますよ」
孝一は照れながらテスラ先生にしっかりとしがみつく。
孝一(・・・柔らかい・・・)
・・・・みたいなことになっていたらどうしよう・・・風切ちゃん」
大海は涙目で風切に泣きつく。
風切(・・・?・・・大海さん、何を言っているんだろ?)
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テスラ先生と孝一は近所のハンバーガーショップでお茶していた。
孝一「めっちゃ安全運転だったな・・・」
テスラ「この間、白バイに捕まってしまいまして・・・」
孝一(・・・リアルな理由)
テスラは孝一を観察しながら考える・・・
この高校生が任務の最中のウチの精鋭部隊を一人で全滅させた?
辻褄は合うけれど
やはり、一番解せない部分がある・・・
一介の高校生にそんな芸当ができるかということだ。
(今日、組織の活動が再度活発化してきているという報告も受けた・・・こんな場所でのんびりやっていることもできないか・・・やはり・・・試すならば早い方がいい・・・)
テスラ「コーイチ、郊外にいいカベを見つけたのですが・・・見に行きませんか?」
孝一「・・・行く」
連れて来られたのは廃工場だった。
孝一(うーん、金属っぽい壁はあんまり好みじゃないんだけどな・・・)
この廃工場・・・いかにも、事件とかドンパチとかしそうな感じだな・・・
テスラ「7月10日・・・この辺りでは花火大会があったそうですね・・・」
孝一「?」
テスラ「・・・その日、軍の秘密工作部隊が、一人の黒い衣装の人物に壊滅させられました・・・私はその犯人を捜すために・・・この国に来ました・・・やられた隊員の傍には異世界堂の饅頭が置かれていました・・・」
テスラ先生はカバンから拳銃を取り出した。
テスラ「黒い衣装の人物は・・・あなたのことではないですか?」
カシュッ
サイレンサー付きの銃はかすれた銃声を上げた。
打った先に孝一の姿はなかった。
テスラは孝一が姿を消す際の一挙手一投足を思い返した。
拳銃を構えた人物におびえることなく、自分がトリガーを引く寸前まで集中してこちらを見ていた。
そんな肝の座った素人がいるわけがない。
まだ、断定はできないが、今の動きは犯人である説を裏付けるに足るものだった。
テスラは周囲を警戒しつつ、逃げた孝一を追いかける。
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廃工場の奥深く
テスラは孝一を追いかける。
夕刻・・・工場の奥は視界が悪い・・・孝一は手ごろなものを遠くに放り投げてテスラの注意をそらす。
テスラ(・・・この乱雑な場所で・・・なんて静かな足音・・・)
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ユズハ「孝一君・・・どうしてそんなに足音が静かなのかしら・・・」
孝一「・・・?・・・そうですか?・・・夜間に足音を立てると・・・家の壁の住人に気取られるからですかね・・・」
ユズハ「もう発想が・・・コソ泥のそれなんだけど・・・師匠として注意した方がいいかしら・・・」
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暗い通路・・・
脳裏には特殊部隊のやられた際のカメラのブレた映像がよぎる。
テスラは踏み込めないでいた。
テスラ(ちっ・・・見失ったか・・・)
孝一は隠れながら考える。
どうしてこんな状況になったのか・・・
単に西洋風ジョークだったり・・・
「もう、先生ってば、冗談になってないっすよー」って出て行ったら笑って和やかに済まないだろうか・・・
うん、最悪ハチの巣にされてコンクリ詰めにされそう・・・
(よし・・・逃げよう・・・近代兵器に勝つとか無理だし・・・)
テスラ先生は言っていた。
黒い衣装の人物を探していると・・・特殊部隊を壊滅させたのが自分ではないかと疑っているらしいことを言っていた。
特殊部隊壊滅?
一介の平凡な男子高校生である俺にそんなことできるはずないだろうに・・・ならば真犯人を探して俺の無実を証明すればいい。
7月10日・・・
あの日の記憶はひどくあいまいだけれども『はたく』の調子がとても良かったことはよく覚えている。調子よすぎて深夜にも壁を殴りに行ったっけ・・・
そうあそこは郊外の寂れたお屋敷の壁で・・・
そうそうあのいい壁をダイナマイトみたいなもので壊した集団がいたっけ・・・サバゲ―のかっこした集団・・・あの人たち無駄にクオリティ高くて、外人さんで、まるで映画に出てくる俳優みたいだったな・・・しきりに俺に対してBB弾打ってきたっけ?
あれ?・・・もし仮にあの人たちが例の特殊部隊だったとすると・・・
犯人俺?・・・
孝一は顔が青ざめる。
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母「それはおかしいわ・・・」
魑魅魍魎扱いされているウチの息子が新任の美人教師に誘われるなんて・・・
大海「水上君は・・・最近かっこよくなってきてるし・・・別におかしくないんじゃ・・・」
母(昔と寸分変わっていないように思うんだけど・・・)
母「もしかして・・・何かきな臭い事件に巻き込まれて・・・FBA捜査官が関与するような世界的な事件に・・・」
大海「そういえば・・・テスラ先生・・・どことなく・・・武術をやってそうな身のこなしをしていたような・・・」
母「・・・」
大海「・・・」
母「・・・なんて・・・映画の見すぎよね・・・」
大海「・・・そうですね・・・」
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