はたく

vsゾンビ




異世界召喚2回目




オーミー=アーカーリーは魔法学校に通う普通の女の子だった。
宿舎に戻って水浴びをしてからベットに寝転がった。


オークの出る森から命からがら逃げ帰ることができたけれど、魔法学校の先生からはひどく叱られた。
その時、助けてくれた召喚獣について先生に話した。



リヴァイアサンは水蛇の召喚獣よ。黒い衣装の男が出てくるわけないでしょう。』



その後、いくら魔法陣を描いても『あのひと』は現れなかった。ついでに言うとリヴァイアサンも現れなかった。



あの人は・・・なんだったんだろう・・・





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孝一が2回目に召喚された時は、大きな廃墟の教会らしき建物の前だった。
ちっ・・・前回のは悪い夢だったとようやく納得しかけていたのに・・・

何やら大海にそっくりのオーミーがまた困っているらしい。ああ、相変わらず言葉が分からない・・・


孝一は持っていた異世界饅頭とお茶をオーミーに差し出した。
彼女は口をもぐもぐさせながらそれを食べて一息つく、

オーミー『(なんだろう、この味・・・すごく懐かしい気がする・・・)』



オーミー説明中・・・
なんでも、魔法学校の課題で・・・
動く死体(ゾンビ)の骨のかけらを収集しなければならない。
ゾンビに噛まれるとゾンビになるため、こうして俺を呼び出したということらしい・・・


あの・・・オーミーさん?・・・俺もゾンビになりたくないんだが・・・


あなたは召喚獣だから多分大丈夫・・・らしいことを言っている・・・
孝一(本当に?)







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さて・・・ということでゾンビが出てくるのを待つわけだけれども・・・暇だな
孝一は周りを見渡す・・・大きな廃教会・・・大きな壁・・・


孝一「ちょっと壁殴りしてきてもいい?」
オーミー『?』



オーミーは孝一の壁殴りをマジマジと見た。



こんな長い間、飽きもせず、ひたすらに壁を殴るその行為、なぜこのひとはこんなことを繰り返しているのだろう?オーミーは しばらく考えて、直観した。
オーミー『(おそらく・・・これは・・・呪いの一種なんだわ・・・)』


オーミー『可哀想に・・・』



孝一(なんか失礼なこと考えてるなこの子・・・)





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孝一はアンデット系?




5人のゾンビがなわばりの見回りをしていた。
廃教会の前を通ると見知らぬ黒い衣装の男がいた。

壁の前で笑いながら異様なことをしている・・・その世にも恐ろしい行為にゾンビは戦慄した。


ゾンビ「こいつ・・・やべぇ・・・」
ゾンビは冷や汗をかいた。



一体のゾンビが恐怖に耐えかねて、孝一に襲い掛かる。

「おい、やめろ・・・」

振り向いた孝一の『はたく』がそのゾンビにヒットした。ゾンビはその場に沈み込む・・・



孝一(・・・やば・・・出会い頭にやってしまった・・・)




ん・・・なんか・・・このひとグロテスクな風貌だな・・・
孝一の目の前に4体のゾンビがいた。



孝一(うお・・・本物のゾンビだ・・・)




孝一はゾンビと対峙する・・・オーミーはゾンビの存在に気づいたのか木の陰に隠れている。
ジリジリと距離を詰める。





ゾンビ「・・・いきなり・・・攻撃してくるなんて・・・なんて・・・凶暴なモンスターだ・・・」

孝一(ゾンビに言われちゃった・・・)




孝一(・・・あれ?・・・言葉が分かる・・・)





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言葉が分かれば平和的交渉も可能になるというのは本当らしい・・・




孝一「あの・・・つまらないものですが・・・」
ゾンビ「これはこれは結構なものを・・・」


ゾンビは異世界饅頭を頬張る。
ゾンビ「・・・これは・・・お世辞じゃなく・・・うまい。」


すっかり打ち解けたわけだったが、オーミーは木の陰から出てこようとしなかった。



孝一「ゾンビって誰かれ構わずかみついて仲間を増やしていくってイメージなんだけど・・・」

ゾンビ「そんな・・・『誰彼構わず増やす』なんて無理無理・・・『バブルの頃』はそんなこともしてたって聞くけど、今じゃ『採用枠』少なくて厳しいよ?」

孝一(・・・なんの話してたんだっけ?)


ゾンビ『まあ・・・あの魔女娘さんみたいにかわいい子は別枠だけど・・・』


オーミー『・・・私は・・・ゾンビには・・・なりたくないです・・・』
木の陰に隠れて弱弱しい声でオーミーが返す。




孝一「なんで普通に話せてるんです?」


ゾンビ「・・・他世界語検定700点以上が『採用』の条件だから・・・いやー、こう見えて・・・俺ら結構エリートなんよ?・・・」

孝一(・・・そうなの?・・・)





ゾンビ「そういえば・・・俺らの骨のかけらが欲しいんだっけ・・・」
ゾンビはおもむろに肋骨の先を少し折って孝一に手渡す。


孝一「・・・・ええ、そこまでしなくても・・・」
ゾンビ「ああ、いいのいいの、明日には生えてくるんだから・・・」
孝一(・・・そうなのか?)



ゾンビ「・・・おっとそろそろ定時だから上がらないと・・・」
孝一(・・・・会社員みたいなこと・・・)


ゾンビは寝ている1名を担いで撤退していった。




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オーミーは孝一をじーっと見る。
オーミー『あなたって・・・呪われているし・・・ゾンビとも会話できるってことは・・・』


孝一「?」


オーミー『・・・アンデットなのね?』


アンデット・・・って言っただろうか・・・
孝一「・・・俺はもっとこう、聖なる何かだと思うんだけど・・・」



オーミー『(何か言っているけれど・・・言葉が分からないわ・・・)』












さて・・・ということでゾンビが出てくるのを待つわけだけれども・・・暇だな・・・ちょっと寝たいな・・・昨日壁殴りで徹夜したんだよな・・・



孝一は草の生える場所で横になりスヤスヤ寝息を立てた。
オーミー『・・・こんな危険な場所で・・・眠るなんて・・・』



そういえば・・・私も・・・昨日は怖くてよく眠れなかったんだった・・・召喚獣もいることだし・・・少しだけ・・・寝よう・・・



1時間後、孝一は目が覚めた。
やっぱり変な時間に寝ると、夜寝れなくなるな・・・起きよう・・・
横でオーミーがすやすやと寝息を立てていた。



周りを見渡す・・・大きな廃教会・・・大きな壁・・・ちょっとぐらい殴っても許されるよね?・・・