はたく 意識の低い大海さん

はたく 意識の低い大海さん




満月の日の3日後・・・





大海は夢見心地で朝ご飯を食べる。

昨夜、孝一に抱き付かれたことを思い出していた。
大海(・・・感極まってのことだったとはいえ・・・孝一君があんなに積極的に・・・)



なんてね・・・
あのあとすぐに『気絶』してたから・・・
『倒れ掛かっただけ』だったというヲチだろうけど・・・



それでも頬が緩むのを抑えられなかった。





$$$




孝一は・・・大海を抱きしめてしまったことを悔いていた・・・
大海を助けることができて気が緩んだとはいえ・・・あれはダメな気がする・・・



朝、朝食
母と孝一は朝ご飯を食べる。




満月の後・・・寝込むのはいつものこととして・・・
いつに増して元気がないわね・・・





母「・・・孝一・・・何かあった?」
孝一「・・・大海とちょっと・・・」




母「どうしたの?・・・大海ちゃんにセクハラでもしたの?」

結果的にそうだけど・・・結果的にそうだけど・・・





母「謝罪は誠意が大切よ・・・」




母「・・・」
孝一「・・・」





母「・・・『大海、お前が可愛くて愛くるしいのがイケないんだぜ』・・・と言うのはどうかしら?」

孝一「・・・誠意はどこに行った?」





$$$




オーミー=アーカーリーは、
先々代魔法学校校長の孫であり、魔力の潜在値もトップクラスではあったが、
要領が悪く、よく魔法を暴発させることから出来の悪い生徒として認識されていた。


だが、
今の彼女をそんな風に思う者など一人もいない。
今の彼女は、『魔法学校の窮地を召喚魔法で救った英雄』だった。


凱旋パレードでは主役を飾り、
盛大な祝勝会では、主賓として招かれた。
オーミー『・・・・・うう』


いつも張り合っていたお嬢様は恥ずかしそうにオーミーを褒め称える。
『・・・ふん、調子に乗らないことね・・・あなたのこと・・・少し見くびり過ぎていたようですわ』
オーミー『・・・・・ええ』





彼女の笑顔は引きつっており、目は死んでいた。





なんだろうあの調子・・・周りの者は喜ばないオーミーを訝しがった。

魔法先生『きっと今までの待遇と落差がありすぎて、現実を受け止めきれないのでしょう・・・』

オーミー『・・・・・ええ』
その言いぐさは少しひどい気がする・・・





$$$





放課後、
今日は大海ひとりで下校していた。


大海は夢見心地だった。
まさか本当に『異世界』なるものがあるなんて・・・

異世界で孝一君に抱きしめられた・・・夢のようだ・・・異世界で・・・異世界で?・・・
なんだか時間がたつほどにただの夢だった気もしてきた・・・




地面が光る・・・この光は魔法陣・・・
大海の周りの風景が一瞬で変わった。




オーミー『・・・アンデットじゃなくて・・・あなたが来たのか・・・』





あ、私にそっくりの女の子・・・ということは・・・・ここは異世界なんだ・・・
やっぱりあの夜の抱きしめられたことは夢じゃなかったんだ・・・

オーミー『・・・なんだか・・・ニヤニヤしてて気持ち悪い・・・・』
異世界



オーミーは用意していたお菓子を大海に差し出した。
二人はそれをゆっくり食べる。
大海(・・・なんだか不思議な味・・・)
オーミーは絵を描いて召喚した理由を説明していく。

『戦争に勝った』⇒『私が英雄として称えられた』




大海「・・・よかったわね。」
にこりと笑いかける。

オーミーは大海のおでこにチョップをかます




大海「?」
オーミー『・・・全然良くない!!・・・私は・・・何も出来なかった・・・何も出来ずにただ泣いていただけだった・・・それなのに・・・こんな扱いされても嬉しいわけないでしょう・・・』




オーミー『・・・』
大海「・・・」




オーミーは大海のおでこをさする。
オーミー『・・・ごめんなさい・・・私はあなたたちに本当に感謝してるんだ・・・』




オーミーは宝石箱を大海に差し出す。
オーミー『正式なお礼はちゃんとするとして・・・とりあえず、この宝石をあのアンデットに渡して頂戴・・・』
中には『赤い大きな宝石の首飾り』が入っていた。





$$$





大海は元の場所に帰ってきた。
家を目指しながら考える。

大海(あの女の子・・・どうして怒ってたんだろ?)


自分が役に立てなかったから・・・そう考えるのが自然か・・・
役に立っていないというならば、私もおなじなんだけど・・・



オーミー  ⇒悔しがる
大海    ⇒ニヤニヤ






もしかして・・・私は・・・意識が低いだろうか・・・







捕まっても『お姫様ポジション』でいいとどこかで思っていた節もあるし
本当ならもっと・・・出来ることがあったはずなんだ・・・



孝一は大海を見かけて声をかける。

孝一「大海」
大海「・・・水上君?」




孝一(・・・謝罪は誠意・・・謝罪は誠意・・・)
孝一は事前に決めたセリフを思い返しながら大海の顔を見る。




大海は悲しい顔をしており、目に涙が見えた。




孝一「・・・え?」
大海「・・・」



大海「・・・水上君・・・本当に・・・ごめんね・・・」



孝一(・・・先に謝られた?・・・)


孝一はどうしていいかわからず・・・
「あーまた何かやらかしたな」と思うばかりだった。