はたく 異世界饅頭を求めて
異世界饅頭を食べたい・・・ただそれだけのために・・・
首都大学物理学科の学生たち
孝一が菓子折りとして持ってきた『異世界饅頭』の虜になった彼らは、饅頭の情報を得るためにあらゆる手段を尽くす。しかし、ネットにも記載されていないマイナー店の情報を得ることは難しく。何か知ってそうな教授から情報を得ることも困難を極めた・・・
第12回 異世界饅頭 対策会議
「さて、どうすれば異世界饅頭が販売されている店を探し出すことが出来るか?だが・・・」
「万策尽きたな・・・」
「前に出てた・・・異世界に行けば売ってるんじゃねという案はどうなった?」
「問題は・・・どうやって異世界に行くか?だが・・・」
「この文献(漫画)には『死ねば』異世界に行けると描いてあるぞ?」
「・・・」
「・・・」
「死か・・・それちょっとハードル高くね?」
「いや、普通にダメだろ・・・死んだら」
「俺・・・この間さ・・・1回生の女子に『どうしたら異世界に行けるだろう?』って聞いてみたんだ・・・」
「それで?」
「気持ち悪いって言われた」
「あー、それは気持ち悪いわ」
扉が開いて、教授が入ってきた。
潮見先生「お前ら・・・また、無駄口たたいてんのか・・・いいから論文仕上げろ、論文」
※物理先生=潮見先生
ぶーぶー
生徒たちはしぶしぶ作業に取り掛かる。
「こうなったのも先生が異世界饅頭の在りかを教えてくれないからです。」
潮見先生「私が、タダで答えを教えるわけがないだろう。出ない答えに苦しむ生徒を見るのが私の唯一の生きがいなのに・・・」
(なんて嫌な先生だ・・・)
潮見先生「そうだな・・・お前らのあまりの熱意に先生もすこしばかりは譲歩しないでもない。」
「!!??」
「!?」
「本当ですか!?」
潮見「本当だ・・・私は意地悪はするが嘘はついたことがないだろ?」
(・・・意地悪もするし嘘もつく気がするけど)
潮見先生「・・・そうだな・・・あと3か月で論文一人2報仕上げたらその店の情報を教えよう」
「2報・・・2報は多くないですか?」
「・・・そんな負荷をかけたら・・・俺また太っちゃうんですけど」
どうする?
生徒たちは円陣を組んで相談する。
「今回ばかりは流石に本当っぽいな・・・」
「俺はやるぜ。あの饅頭を食べないうちは卒業できないぜ。」
「俺・・・また太っちゃう・・・」
「じゃあ食うなよ」
全員で掛け声をあげる。
「いくぞ、邪悪な先生の魔の手から饅頭を救い出すんだ!!!」
「おう!!!」
潮見先生(・・・・邪悪って・・・)
それからの生徒の人の変わったような頑張りによって論文はどんどん仕上がっていった。
ラスト進捗の遅かった太った生徒のフォローに全員が徹夜で作業した。
「あの・・・夜食何にする?」
「手を動かせ!!このデブ!!」
明け方・・・やっと論文が完成したところで全員が始発までうたたねを始めた。
周りの風景が変わる。全員が暗い森の中で寝ていることに気が付いた。
そこは異世界だった・・・
「あー寝てたか・・・ん、おいおい誰だよ。この部屋に草とか木とか持ってきたの、ちょっとは片付けろよ・・・」
「・・・ああ、そうだな、ゴミ袋はこの辺に・・・・ん?」
ゴミ袋はない・・・
というか・・・机もパソコンも何もかもない・・・
全員がここは森の中であるということに気づく・・・
なんだこれ・・・
生徒たちは円陣を組んで相談する。
「・・・おいおい、なんだよこの状況・・・」
「・・・俺は明らかに潮見先生のいたずらだと思うぜ。」
「・・・いや流石に無理だろ・・・つーか今日は見たいミステリー番組あるから帰るって言ってたぜ?」
「・・・あのさ・・・ここ異世界なんじゃね?・・・ほらあそこ見ろよ。」
「!?」
前方にゴブリンが一匹歩いていた・・・
ゴブリンはこちらに気が付いて警戒する・・・
「・・・ゴブリンだ・・・」
「これ、ゲームとかで見る奴だ・・・」
「お前ら、やめろよ。ちょっと『ゴブリンっぽい顔』だけどそんなこと言ったらこの人に失礼だろ」
「!?」
「!?」
(こいつ、これが人間だと思ってんのか・・・)
「あの、すいませんでした。俺たちのひとりが失礼なことを言って」
「すいませんでした。」
「すいませんでした。」
とりあえず、全員で謝罪した。
ゴブリンは現状に戸惑いながら去って行った。
『(なんだ?おかしな人間がいるな・・・)』
「・・・間違いない、ここ異世界だよ。」
「やったーついに異世界に来れた・・・」
「・・・ということは・・・俺たちって死んだの?」
文献(漫画)には死ねば異世界に行けると描かれていた・・・
「・・・」
「・・・」
「この世界のどこかに『異世界饅頭』があるんだ・・・」
「おっしゃー絶対見つけてやるぜ!」
全員は深く考えないことにした・・・
グルルルル
サイに似た強大な化け物(サイカス)が姿を現す。
しかも、なんか怒っているように見えた。
「・・・やばい、このモンスター?は強そうだ・・・」
「・・・めっちゃ怒っている・・・」
サイカスは生徒たちめがけて突進する。
「おいヤバい、逃げろ!!!」
ドン
のけぞった生徒は誰かがモンスターと正面から組み合っているのを見る。
「・・・デブ!!」
太った生徒がサイカスと組み合って突進を止めていた。
「・・・隠してたけど・・実は俺・・・高校の時相撲部だったんだ。」
「・・・まじかよ」
「・・・いいぞそのままやっちまえ」
次第に押し負ける太った生徒・・・
「・・・駄目だ。数年ぶりに運動したから・・・筋力が・・・俺のことはいいから・・・みんな逃げてくれ・・・論文手伝ってくれて・・・ありがとな・・・」
全員迷いなくサイカスに飛びかかり、太った生徒を補助した。
「馬鹿野郎!!放ってっておけるかよ!!」
「みんなで『異世界饅頭』食べるんだろ?あきらめんなよ!!」
「・・・お前ら」
健闘むなしく、全員の力でもサイカスを抑えきれない。
もう腕がしびれて限界だと感じたその時・・・
巨体がサイカスの側面から体当たりしてサイカスを突き飛ばした。
翻って、サイカスは巨体に突進する。巨体はサイカスの突進を優しく受け止めて投げ飛ばす。
流石に分が悪いと思ったのか、サイカスはすごすごと逃げていった。
はぐれオーク『大丈夫か?お前たち・・・ここはサイカスの縄張りだから急いで離れた方がいい。』
オークに案内されるまま生徒たちは森を抜けたのだった。
「ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
生徒たちは頭を下げた。
オークはエルフの少女を肩に乗せて去って行った。
「やべえよ、あの『オークっぽい顔の人』かっけえよ。」
「ああ、俺まだドキドキしてる」
「オークかっけー」
「これデブの時代きちゃう?」
「・・・いやそれはない。」
$$$
生徒たちはいつの間にか元のゼミの居室に帰ってきていることに気が付いた。
潮見先生は生徒にメモを渡す。
そこには異世界饅頭の店の場所が記されていた。
「・・・ん、異世界饅頭って普通に売ってるのかよ・・・」
「異世界饅頭はこっちの世界にあった・・・なんだか哲学だな・・・」
「哲学じゃねーよ、ちょっといい話みたいにしてんじゃねーよ、あれなんだったんだよ!!!」
今日の出来事はいつまでも謎のままだった。
首都大学物理学科の学生たちの異世界編これで終わり。
このまま彼らが無事に異世界堂にたどり着けるはずもなく・・・
さらなる難関が待ち受けているのだった・・・
サイカスを受け止めた・・・
俺・・・高校のとき・・・相撲部だったんだ・・・
マジかよ・・・
おい・・・あきらめんのかよ・・・
俺はあきらめきれねぇんだよ!!
馬鹿野郎どもを放っておけなかっただけさ
ぬかせ!!
エルフ『・・・なんかあの人たち怖いんだけど・・・』
オーク『・・・だが・・・いい眼をしている・・・』
エルフ『(・・・そうかな?)』
哲学じゃねーよ、ちょっといい話みたいにしてんじゃねーよ、あれなんだったんだよ!!!
FBA捜査官だと・・・
テスラ=エレマーレあの野郎
30点の饅頭送りつけたまま音沙汰なしじゃないか