ウツロ 髭スライム
ウツロは久しぶりに北支部の街に帰ってきた。
今回のスライム討伐任務は大変だったな・・・
何匹もいる上に生きがいいのかぴょんぴょん飛び跳ねて弱点に当たらずにめっちゃ苦労した・・・
もう当分スライムは見たくないな・・・
夜遅く・・・下宿のドアを開く。
ウツロ「ふ・・・ただいまを言う相手もいない・・・」
「お帰り」
ん、声が聞こえた。
テーブルの上に髭の生えた透明ブルーの塊が乗っかっていた。このフォルムどう見ても・・・スライム・・・です。
ウツロ「ぎゃああ・・・家の中にスライムがー」
ウツロは剣を引き抜いてぶんぶん振り回す。
「落ち着け、貴公、私に敵意はない。」
しかも・・・喋ってる・・・
$$$
紅茶を飲んで一服
髭スラ「というわけで、我がベルベットアベルシュタイン国を救っていただいた其方に謝礼を申し上げに馳せ参じたわけだが・・・」
単語が長くて複雑だが、
どうやらこのスライムは今回の討伐任務で悪いスライムを倒してもらったことに対して礼を言いたいらしい・・・
髭スラ「何か欲しいものはあるか・・・」
ウツロ「ないです・・・」
髭スラ「何かあるだろう・・・我が国のキレイどころを嫁にやっても良いぞ。国一番のべっぴんさんがお主にぞっこんなのだがな・・・」
スライムのか・・・俺はどんな上級者だよ・・・
髭スライムはどこからか念写の紙を取り出す。
「どうだ、美人だろう・・・それにプロポーションも抜群でエロスだろう・・・ふふこの果報者め!!」
すごく・・・スライムだった・・・
ウツロ「・・・遠慮します。」
髭スラ「うーん、嫁も欲しくないのか・・・ひとり身でひどく寂しそうに見えたのだが・・・まさか男色・・・」
ウツロは剣を引き抜きテーブルに突き刺す。
ウツロ「・・・言葉に気を付けてください・・・今日の俺は気が立っているので・・・」
髭スラ「いや、冗談だ。」
$$$
翌日は休みをもらった。
朝起きると・・・部屋がきれいになって・・・朝ご飯が出来ていた。
髭スライムが向かいのテーブルに座っている。
髭スラ「さあ、冷める前に食べてしまえ・・・」
まだいる・・・
というかスライム(男?)に部屋掃除されて、朝ご飯つくってもらう俺ってどうなんだ・・・複雑すぎて反応に困るわ・・・
とりあえず、髭スライムさんには早々にお引き取り願うことにした。
ほら、街の門まで送るから早く早く
スライムと歩いていると
偶然、ケーリ―さんに出くわしてしまった。
ケーリ―「ウツロさん・・・おはようござ・・・え」
ケーリ―さんは信じられない物をみたような顔をした。
顔が引きつっている。
よりによって一番会いたくない人に・・・ヤバい変な奴だと思われる・・・
ウツロ「・・・あの・・・これには・・・深い事情が・・・」
ケーリ―「・・・個人の趣味は・・・自由ですよ」
なにその笑顔
奇しくも、それがウツロに向けられたケーリ―さんの初めての笑顔だった。
髭スラ「ほほう・・・ああいうのが好みなのか・・・なかなかいい趣味ではないか・・・お主も隅に置けぬのぉ・・・このこの・・・」
髭スライムは肘?でウツロをつっつく。
ああ、お前のせいでさらに好感度が下がったけどな・・・
$$$
門の前で
ウツロ「なあ、俺に感謝は間違ってもするな・・・俺はお前の同族をたくさん殺してきたし、これからも殺す・・・だから・・・こんなことは止めろ」
髭スライム「・・・そうか・・・お主は・・・完全に味方でないとわかっておる・・・だがな・・・完全に敵でもない・・・」
ウツロ「・・・」
髭スライム「今後ともよろしくな」
ウツロ「利害が一致すれば・・・な」
ウツロと髭スライムは握手した。
その後、ウツロがスライムを家で飼っているという噂が広まったのは数日後だった・・・それでも俺はやっていない
帰れ