城内の不審人物


【過去編】城内の不審人物と取引





ま・・・ま・・・





城内に建てられた魔法研究所、魔力が高い人々が集められ熱心に魔法の訓練に励む。
中でもミレスはたいそう優秀だそうで、皆の注目を浴びていた。


そんな様子を横目に見ながら、今日も廊下を掃除するウツロ・・・



魔法・・・か・・・



指導者の少なさから魔法は魔力の高い者にしか教えることを許されない。
つまり、ウツロが魔法を覚えることは一生ないということだった。
・・・
嫌な考えを振り払うためにとにかく掃除に没頭することにした。



ガシャン、ガシャン・・・




廊下の隅から音がする。
廊下の先、侵入者用の罠にだれかがかかって身動き取れないようだった。


ウツロ「・・・大丈夫ですか。」


その人物は30歳くらいの痩せた無精ひげのおじさんだった。
腰に剣を携えている。
新しく来た人かな?・・・ウツロは罠を解除する。


「ありがとう・・・」
ウツロ「いいえ・・・」


ウツロ「あの・・・出口はあっちですよ・・・」
「む・・・そうか・・・では・・さらばだ・・・」


そそくさを出口の方へ走って行ってしまった。

なんだあのひと?業者の人にしては怪しいな・・・



落とし物・・・



クラスティア魔法協会の身分証明のカード・・・


・・・


まさか、敵国のスパイだっていうのか・・・
報告・・・
いや、俺にも変な疑いがかかりそうだな・・・
こんな危ないものはさっさと燃やしてしまった方がいいのでは・・・


・・・
・・・・
『魔法協会剣士:ジレン=ハウル―』





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ここは、
荒くれどもが集まる酒場
彼らは自分のことを『傭兵』と名乗り、魔獣退治の依頼などを受ける。

酒場の隅っこに・・・数日前のの不審人物がいた・・・



ウツロは・・・
何度も深呼吸して・・・意を決して話しかける。




ウツロ「あの・・・」
ジレン「・・・」


ウツロ「数日前・・・会いましたよね・・・」
ジレン「・・・む?・・・そうか?・・・いや知らんな・・・人違いだろう・・・」
そっぽを向く男
分かりやすく しらばっくれてるな・・・



ウツロ「落とし物が・・・」
ジレン「!」



「場所を変えようじゃないか」ということで、男はウツロを表へ誘導する・・・



ウツロ「あんたの大事な落し物は、隠してある。まだ誰にも言っていない。俺に何かあったら、仲間が落とし物を上司に報告するように言ってある。」
・・・なんて言ってみたりして



ジレン「・・・」
ウツロ「・・・」




ジレン「・・・何が望みだ?」



ウツロ「・・・その・・・」
ウツロは口ごもる。



ジレン「わかった・・・この砂糖菓子でどうだ?」
ウツロ「・・・」
それで言うことを聞くほど 子供じゃない



ウツロ「・・・その・・・」
ジレン「・・・お小遣いか・・・いくら欲しい?」



ウツロ「・・・お金は欲しくない・・・」



ジレン「・・・まさか」
ジレンは身の危険を感じるような乙女動作をする。
ちげーよ、こんなおっさんの体を欲しがるかよッ




ウツロ「ま・・・ま・・・魔法・・・魔法を教えて欲しい!!」















初めての魔法








もしかして敵国のスパイ?
そんなわけないか・・・あんな間抜けそうなスパイがいるわけがない。




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夜、ウツロは孤児院の寝床へ向かう。
城勤めといってもまだ、成人前だしな・・・どこかに部屋を借りたい。
























市街地を通る際、昼間の男に呼び止められる。


「・・・今日は本当にありがとう・・・」
「はぁ・・・」
早く帰りたかったが、男はベラベラと話続ける。




「今日罠にかかってしまった時、敵国に捕まって機密情報をもらすぐらいならば・・・ここでいっそ命を絶つか・・・という瀬戸際だった・・・助けてくれて本当にありがとう・・・」



敵国に捕まる?・・・機密情報?・・・



ウツロ「あんた・・・まさか・・・敵国のスパイなのか?」
「む、知ってて助けてくれたのではないのか?」





ウツロ「・・・」
「・・・」





「・・・今日のことを黙っていてくれたら・・・この砂糖菓子をやろう」
ウツロ「それで黙るほど・・・子供だと思うなよ・・・」



「秘密を知ってしまったからは・・・生きて返すわけにもいくまい・・・」
腰に携えた剣を抜く真似をする男
ウツロ「横暴すぎるだろう・・・」


「・・・どうすればいいだろうか?」
ウツロ(俺に聞くなよ・・・)



ああ・・・変な奴にかかわってしまったな・・・今告発しても・・・俺まで迷惑被りそうだし・・・



ウツロ「ああ・・・あの・・・今日見たことはお互い忘れるということで・・・どうでしょうか」
「・・・む・・・そうか・・・」