単独行動の常習犯
同期の剣士ケルンは夜中にこっそりと外へ向かうウツロに声をかける。
ケルン「おい、ウツロ、どこに行くんだ?」
(・・・面倒な奴に見つかったな)
ウツロ「・・・いやートイレは何処かな・・・」
ふらふらと元の場所に戻るように見せかけた。
ケルン(あの間抜け顔・・・)
いつだったか・・・同じ部隊だったとき・・・『単独行動する前に ごまかす顔』だ・・・奴は単独行動の常習犯だからな・・・
ケルンはこっそりと尾行することにした・・・
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ウツロは捕らえた獣人を拘束する。
一応、獣人はあまり殺さない方が、国家間条約上、望ましいらしい。
「あ、兄貴っ」
「!」
ウツロの背後に飛びかかってくるもうひとりの獣人が見えた・・・
「しまっ・・・」
風切り!!!
ケルンの風切りが、獣人の背中をかすめる。
もうひとりの獣人は血を流しながら退散していった。
ケルン「・・・」
ウツロ「・・・」
ケルン「また・・・単独行動か・・・ウツロ・・・」
ウツロ「・・・すまん」
ケルン「どうして・・・獣人と戦うことを会議の場で話さなかった?」
ウツロ「・・・」
ケルンは以前に何度かウツロと同じ隊になったことがある。確かに魔力の少ないウツロの意見は聞き流されることが多い。実際にこの目で何度も見たことがある・・・
ケルン「確かに・・・あそこで発言しても反対される可能性が高かったと思う・・・
だが・・・それでも・・・それでもだウツロ・・・
それでもお前はこのことを言うべきだった・・・俺はそう思う。」
ケルンの眉を歪ませながらの発言にウツロも困惑気味だった。
こいつ・・・相変わらずの堅物だな・・・
「まぁとにかくだ・・・ケルン・・・ありがとな」
ウツロは一息ついた。
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ひとりの獣人の捕縛と同時に・・・とんとん拍子に事が進んだ。
アジトが割れて、攻めに転じた魔法協会の行動は迅速で、あっという間に片付いてしまった。
事態が収束しかかった際の会議にて・・・
会議の雰囲気はいまだにドロドロのグズグズだった。
泥沼の案件というのは、解決しかかっても泥沼なのが常だと思う。
責任の押し付けやらが主な原因・・・
そして、どうしても最初の獣人捕縛に注目が集まってしまった・・・
「ウツロ=ハイイロの単独行動・・・」
「結果大事には至らなかったものの・・・やはり規定違反・・・」
「到底容認されるものではない・・・」
めっちゃ怒られる方向に話が流れ始めた・・・ああメンドクサイ
こういう時の最善は下手に反論せずひたすら奴らのサンドバックに徹する方がいい。
あとちょっとの我慢だ、頑張れ、俺
「待ってください!!」
後ろから手を挙げて反論する人物・・・ケルンだった・・・
(あいつ・・・何を言うつもりだ・・・下手に波風立てんなよ・・・)
あああ