黒い化け物
死ぬのが・・・悲しいから・・・殺す者を殺せ・・・
目が覚めた・・・
ん・・・
あれ・・・刺されたはずなのになんともない・・・
ここは元の小屋だった・・・
なんださっきのは悪い夢でも見ていたんだな・・・
はぁ・・・良かった。
立ち上がってあたりを見回す。
玄関口でゴブロウおじさんが血を流して横たわっていた。
目を反らしたかった、事実を現実を受け止めたくなかった・・・しかし、まぎれもなくそれはそこに横たわっていた。
「・・・ゴブロウおじさん」
おじさんの体は・・・既に冷たくなっていた・・・
少し離れた場所から火の手が上がっていた。
さっきの奴らがゴブリンの村を襲っているんだ・・・
村を・・・村を・・・
ゴブロウおじさんの最後に聞いた声がはっきりと耳に残っていた。
歩く、歩く
ただ歩いているだけなのにどんどん呼吸が荒くなる・・・
心に色々な映像が流れ込んでくる・・・
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鎧と盾を装備したヒトの5人組は次々とゴブリンたちを殺して村に火を放っていく。
彼らは笑う、ひたすらに笑う・・・
ふと、少年がゆっくりこちらに向かってきていることに気づく。
「なんだ?」
「ああ、こいつ、さっき小屋で倒した魔獣か?」
「まだ息があるじゃんかよ」
虚ろな目で何かをつぶやいている・・・
(死ぬのが・・・悲しいから・・・殺す者を殺せ・・・)
少年の影から黒い魔力がどんどん染み出てくる・・・
5人のヒトは命の危険を感じ一斉に飛びかかったが・・・
既に遅かった・・・
あいまいな意識の中・・・少年は声を聴く・・・
優しそうな女性の声だった。
『シンカ・・・シンカ・・・生きていて良かった・・・』
なんだこの声?・・・
懐かしい気がするけど・・・
思い出せない・・・
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夜が明けかけていた・・・
少年の周りにはズタズタに引き裂かれたヒトの死体が転がっていた・・・
「・・・」
ふと、大きな黒猫が少年の前に現れる。
黒猫「すごい音がしたから見に来てみれば・・・やっぱり君だったか・・・」
黒猫「やぁ・・・どうだい?・・・殺した後の感想は・・・」
「・・・」
「別に・・・どうということもないかな・・・」
黒猫「そうか・・・それは・・・何よりだ・・・」
「・・・シンカ」
「?」
「俺の・・・名前らしい」
「そうか・・・ちなみにボクの名前は『ノワール』だったらしい・・・これからもよろしく、シンカ」
「ああ・・・よろしく、ノワールさん」
大きな手が影から現れる・・・
手は地面を掴んで
影から大きな黒いヒト型の化け物が
黒い化け物が・・・冒険者をズタズタに引き裂いて殺す・・・