裏切者には・・・
魔法協会はどんな者にも寛容だ。
呪われた者、魔力が多すぎて制御できない者、魔力が少ない者、種族も問わない。
そのすべてを等しく巻き込んで組織を形成する。
その『寛容さ』こそが急速に組織を発展させることができた要因だとも言えよう・・・
ただし、過去に問題がなかったわけではない
リグレットは火の七賢人グレンの命令を思い出してため息をつく。
獣人ヴェン君のことだ。
彼の行動を監視して・・・少しでも裏切る素振りを見せたら・・・
ふー
リグレットは短くため息をつく。
過去の事を思い出す。
『魔眼』
生まれた時から私に付いていたモノ・・・呪われたモノ
これのせいで、村を追い出され、両親を失い、人々から忌み嫌われた・・・
嫌な過去思い出しちゃうな・・・
私は・・・アクアローナ様に保護された・・・
私を保護するという事に魔法協会の他の幹部は大反対だったらしい。
そして、私は火の七賢人のグレン様の管理下におかれて、今現在に至るわけだが・・・
・・・
そう考えるとグレン様って意外に面倒見が良いんだねぇ・・・
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獣人ヴェンは男子寮の屋根の上で星を眺める。
クラフトと同じ部屋で自由ではないが、奴が寝静まった頃合いを見つけてこうしていることが増えた。
「俺はこんなところで何をしてるんだろう・・・」
本国へ送還された他の獣人盗賊団の仲間はどうしているだろうか・・・おそらくは奴隷みたいに働かされているんだろうかな・・・仲間を裏切った俺は・・・100%死刑だ・・・まして人間に組するなんてご法度中のご法度だからな・・・
人間に組する・・・裏切者・・・それが・・・今の俺
幼い頃、星を数えたことがある。
俺の唯一の肉親の婆ちゃんとだったな・・・
婆ちゃんが死んでからは・・・行く当てもなくて・・・悪い仲間の使いパシリやって・・・こんな異国まで来ちまった・・・
獣人盗賊団の日々を思い出す。
村はずれの家を襲った時、
その家は老婆しかいなかった。
獣人に殴られて悲鳴をあげる老婆・・・
ヴェン「あのさ・・・もうその位でいいんじゃね?」
「は?」
「何を言っている。
ヴェン「ほら老人にひどいことするのも目覚めが悪いしさ・・・」
「人間風情がどうなろうと知ったことか」
「お前、こういうのが好みなのか?・・・はははは」
ヴェン「ははははは・・・」
ダサい・・・マジでダサいな・・・
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ヴェン「頼む!!」
言われるまでもない・・・
炎迅フレイムブレード
今回だけだ。お前を信用したわけじゃない
ヴェン「・・・ああ、望むところだ」
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リグレットはそれを見て小さく小さく安堵したのだった。
『経過報告:不審な点は見られない、経過を観察する』