【行商人編】この世の自分の席


【行商人編】この世の自分の席




行商団は・・・
西の国近くまでやっとのことでたどり着いた。




一番の難所を抜けたことによって
全員に安堵の雰囲気が漂う。



近くの街で行商団は駐留する。
一旦は補給をして、西の中心都市へ向かう予定だ。



街の壁の中、
酒盛りをするみんな・・・




ウツロはひとり・・・浮かない顔をしていた。




カルロ「あんた・・・まだ、ジョセフさんのこと引きずってるんだね・・・」
ウツロ「・・・別に」



いいかい・・・ちょっと残酷な話をするよ・・・
この行商団の暗黙のルールは『自分の身の安全は自分で守ること』だ。
私はとっさの時、あんたを守らない・・・
あんたも、もしもの時は私を見捨てて逃げるんだ・・・



ウツロ「・・・そんな・・・」



カルロの目は真剣だった・・・本気で言っている。




ウツロ・・・
この世に安全な場所なんてどこにもないんだよ・・・
あんたの故郷のラグベール・・・その王の住まうお城ですら・・・
たった一夜で滅びてしまうんだから・・・ね





その夜、ウツロはふと思い出す。
いつか誰かから聞いた話・・・この世は『椅子取りゲーム』に例えられる。
音楽が流れている間は椅子の周りをグルグル回り、音楽が止まった瞬間・・・座る。
座れなかったものは・・・脱落する。
『この世の椅子取りゲーム』でそれは・・・『死』を意味する。



全員が・・・等しく平等に・・・敵だ・・・
等しく平等に?・・・そんなわけがないだろう・・・
貴族、権力者、魔力を多く持つ者は椅子が必ず準備されているんだ・・・



魔力の少ない俺は・・・きっと・・・椅子が・・・とても遠いかもしれない・・・




その日は・・・とても怖い夢を見た・・・