ウツロ フェイントは有効


【行商人編】当たらない風切りの対処方法①





今日もコソコソと風切りの練習にいそしむ・・・





行商団の親方はその様子を遠くから見ていた。


親方「ウツロの奴・・・頑張ってるじゃあないか」
カルロ「・・・」


親方「ウツロの剣術はモノになるかもしれねぇぞ?」
カルロ「・・・あの子、魔力5なのよ・・・無理に決まってる」


親方「過保護だなぁ・・・」
カルロ「・・・」



カルロ「うう・・・そんなんじゃないから」





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風切りが当たらない原因はおおまかに2つある・・・
①自身の風切りの刃の発生距離の測り間違い
②対象の動作によるミス



まず①について・・・

風切りの刃は一瞬の『その距離』にしか発生しない。
『その距離』をしっかり覚えないと始まらない。

わずかな差異によって刃の距離が変化する風切り
剣への魔力の注ぎ込み方・・・
剣の振り方・・・踏み込み方・・・いちいち揃えないと同じ距離は再現できなかった・・・



これは本当に安定させるのが難しい・・・




よしんば 安定したとしても・・・
景色が目まぐるしく変わる戦闘中にどうやって距離を測るんだか・・・


練習も5回風切りを撃ったら終了・・・
数をこなして覚えていくならば・・・自分は他者と比べて圧倒的に不利ですこと・・・
残りの時間は『風切りを撃つ気持ち』で剣でも振るかねぇ・・・むなしい




・・・
ふと思う・・・




・・・これが正しい方法か?





こんな方法面倒だ・・・
もっと簡単でサボることが出来て・・・楽できる方法があるのではないか・・・
悪い方法で変な癖がついて、戻すのにさらに苦労することもあるのではないか・・・
そもそも行き当たりばったりなんて非効率だし・・・
素人、素人、素人・・・

そんな考えが頭をよぎり心を乱す・・・






カルロ「誰でも簡単に儲かる方法があるなら・・・もうやってるっての」






向こうから聞こえるカルロの声にウツロは・・・はっとする・・・
ウツロ「・・・」


商人としての考え方・・・
もし誰かが楽な方法を知っているとして、
それを簡単に誰かに教えるだろうか・・・
いや、見返りを要求するだろう・・・


だったら・・・
地位もお金も人脈も・・・魔力もない自分が・・・
楽な方法を知ることは・・・不可能かもしれなかった・・・



そんな風に考えれば・・・
あきらめがつく気がするな・・・




心が・・・少しだけ・・・おだやかになった。









【行商人編】当たらない風切りの対処方法②




一匹のゴブリンと対峙するウツロ・・・





ゴブリンの盗賊の襲われる行商団・・・
護衛の部隊が奮戦してこらえている。

ウツロも剣を持って一匹のゴブリンと対峙している。
相手は剣と盾を持っている・・・動きが素早い



このゴブリンは『風切り』を知ってるゴブリンだ・・・手ごわい



剣を振る・・・スカッと空を切る
あ・・・発動できてない・・・ミスった


にもかかわらずゴブリンは後ろに飛び退く。



そうか・・・撃つと思ったから避けた・・・
フェイントってことか・・・



ウツロは意地悪く何度か剣を振る・・・



そのたびにジャンプしたり、後ろに飛び退く相手のゴブリン・・・
くくく・・・愉快愉快
ゴブリンは騙されたことに気づいて悔しそうだ。


もう魔力少ないけど・・・フェイントのおかげで、俄然こっちの方が精神的に優位に立ってるぞ・・・



ゴブリンの方も対抗策に出る。
あえて、横ステップを入れてウツロをかく乱する・・・



この・・・ちょこまかと・・・こっちが狙い辛いってわかってるのか・・・賢い



読みあいに次ぐ読みあい・・・
じりじりと膠着状態になった・・・
お互いの額に汗がにじむ・・・




ぶぉおおおおおおお




笛の音
ゴブリンの撤退の合図のようだった・・・





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フェイント・・・
そんな手もあるんだな・・・
わざとタイミングを遅らせて撃つのも有効みたいだし・・・
奥が深いんだな・・・




レーベル「ふふふ・・・小僧・・・レベルアップしたいんじゃないか?・・・今なら安くしておくぞ?」




ウツロ「・・・」
うるせぇよー








真剣に悩むウツロの様子を横目で見るカルロ・・・



カルロ「・・・」
ゴブリンってこの辺で一番弱い魔獣なんだけど・・・ね
でも、なんか水差すのも悪いな








ホント・・・男って馬鹿ばっかり


カルロはため息をついた。
















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剣が悪いかもしれない・・・こんな安物の剣では自分の実力の1割も出せないよな・・・


カルロ「銅貨5枚になりますっ」



ウツロ「・・・え」



カルロ「だから・・・お金」


有料だった・・・
ちくしょう・・・あのレベルアップ祈祷師に払ったお小遣いさえあれば・・・







まず第一に自分の現状把握が最優先だ・・・


あのジレンから教わった魔法だし、どこかに抜け漏れがあるかもしれないし・・・
それに世の中にはもっと簡単でオーソドックスな方法もあるかもしれない・・・








のだから・・・


そう考えるとちょっとは心が楽になるんだろうかね・・・なんて







誰だって楽をしたい・・・
楽をするための苦労をするのが、この行商団だというのならば





①は相手が必要ないから・・・
ひとりでも対策できるかもしれない・・・





つまりはそういうことだった・・・



進むしかない・・・その先に光があろうとなかろうと・・・











この先の見えない迷路を進むしかない・・・



とはいえ・・・この魔法以外
覚えることが出来る伝手つてがない・・・










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距離は・・・そうだな・・・
剣を相手に水平に向けて何倍か分と測るのはどうだろうか・・・












この手探り感は仕方ないと受け入れよう







心はおだやかだ・・・













少しでも集中を切らせば・・・魔法の発動すら安定しない・・・





ウツロは考える・・・



まず、敵がよそ見をしている時













カルロ(・・




当たらない風切り




強くなってやがる・・・戦いの中で・・・













ははは・・・まったく・・・生産性がないな・・・



強さは停滞する・・・
そこからどうしていくか
結局はセンスの問題