貧乏くじなポジション
【魔法協会創設編】戦う理由
アルザスは・・・強かった。
風の魔法を纏った剣と移動魔法で魔獣とラグベール軍隊を切り刻んでいく・・・
たくさんの返り血を浴びて赤く黒く変色するアルザスの剣
そして、体中に刺さる矢と剣と魔獣の牙・・・
本人は「ワーグナー様の改造によって魔法核コアを破壊されなければ死なない」と強がっているがその姿はとても痛ましかった・・・
アルザスの必死の頑張りにもかからわらず、
ラグベール軍の侵攻はむしろ勢いを増すばかりだった。
『剣神ガルフェン卿』『木の大魔法使いマクラーレン』軍事的2柱が未だに王都に縛り付けられたまま動かない、「王は自分の身を守ることしか考えていない」そう皆が噂する。「王自身が既にこの国をあきらめている」そんな国が勝てる道理などあろうものか・・・
周辺諸侯たちは次々とラグベール国の軍門に下っていく・・・
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水修復ウォーターヒール・・・
私はアルザスの傷を治す・・・
「ありがとね、アクアローナ」
ふと見ると・・・
アルザスが草むらに隠れている猫に餌を与えていた。
私たちの野営地によく顔を出す、図々しい猫だった。
撫でようと・・・ゆっくりと手を近づける・・・
にぃあ”!!
猫はアルザスの手を引っかいて逃げていった・・・
アクア「・・・」
見られてバツが悪そうなアルザス・・・
少し照れながら話し出す・・・
アルザス「あの猫が好きなんだ・・・この顔じゃあ怖がられて、しまうけど」
アクア「その猫は不細工で無愛想だわ」
その猫に・・・クラスティアの民衆の姿が重なった・・・
ラグベール軍を退けても・・・感謝すらしない・・・
あんな奴らのために戦って傷つく・・・アルザス・・・
・・・そんな猫いっそ殺してしまえばいい
「なんというか・・・」
ツンしかない中にデレの可能性を見出すというか・・・
想像の余地がある・・・そんな感じ・・・わかるかな?
西の国の故郷に
『ツンデーレ信仰』というのがあるんだけど・・・
嫌いの感情を『ツン』
好きの感情を『デレ』
と呼び、生涯をかけてその『黄金比』を見つけることに専念する密教なんだ・・・
いずれその境地『モエ』に到達するために
その『極地』にこんな教えがあってね・・・
『99%のツンの中に1%のデレを見つける』
この世には99%のツンしか存在しない、
でも、その1%の『デレ』を得るためには、魂をかけて戦う価値がある・・・
ということなんだけど・・・
普段無口なアルザスの熱弁・・・
(何を言っているか、全くわからないわ・・・)
「・・・ふふ」
私はなんだか可笑しくなった・・・
「もう、ちょっと馬鹿にしているでしょ?」
「・・・いいえ、そんなことないわ」
アルザスは少し変な人物だった。
そこがたまらなく愛らしいんだけど・・・わかるかな?
何を言っているか、全くわからないわ・・・
アルザスの活躍に湧き上がる民衆たち・・・
ひどく身勝手に見えた・・・
アルザスとは少し前から砕けて話せるようになった・・・
私はとても腹が立っていた・・・
苦労を無責任に押し付ける王家に・・・
何もしないで無責任にアルザスを はやし立てる 民衆に・・・
もう終焉しか残されていないのに、いまだにアルザスを苦しめるこの国に・・・
ふふふふ・・・
あなたはとっても変わってる・・・おかしい人・・・
サリアはいい仲間になる・・・私のセンサーがそう言っている
壊れているんじゃないかしら、そのセンサー・・・