ウツロ【魔法協会創設編】アウディーネ家の天才魔女

【魔法協会創設編】アウディーネ家の天才魔女




この私、アクアローナ=アウディーネは 『ズルい人間』 だ。





歴代最高レベルの魔力と素質を持って生まれた私・・・
一度として本気で魔法を使ったことがない。
だって、先代や本家の方々に喧嘩を売ることになりかねないですしねぇ


幼い頃から傾いて崩壊しかかっているこの国・・・そう遠くない未来、このクラスティア王国は滅びる。そうだ、クラスティア王国が亡びたら世界中を旅しよう、アルザスの生まれ故郷の西の国にも行ってみたい・・・

魔法を習うことだって成り行きだったが、
自分では気に入っている、
私ほどの魔女ならば自分の身だけは最低限守れるだろう
『ドラゴン』やら『鋼鉄の森の魔女』に喧嘩を売るような真似をしなければ



などと思っていたのですけれど・・・





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アクアローナとサリアは対峙する・・・





ラグベール王国軍の策略のまんまとハメられた気がして腹が立つ。
きっとクラスティア軍の鎧を着て鉄の森へ放火したのだろう・・・
こうなると「鋼鉄の魔女がラグベール王国に味方したという噂」もデマでしょうね
ああ、やはり叔父さんの情報など宛にすべきではなかったのです。
もしかしたら、自軍の内部にもスパイがわんさかいたりして・・・



退路はない・・・
背を向ければ、あの剣を飛ばす魔法の餌食だ・・・


アルザスは大丈夫・・・あの程度の傷ならば大丈夫だ・・・


アルザス・・・
あなたがどうしてこんなに私たちの国のことを信じてくれるのか・・・わからない
でも・・・あなたが・・・光り輝く未来を信じてくれるなら・・・
私は・・・




私は・・・それに殉じますわ・・・





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ジリジリと見つめあう・・・
アクアローナとサリアーデ・・・





サリアが手を握る
空中を浮遊する剣が四方からアクアローナに突き刺さる・・・
アルザス「アクアローナ!!」

アクアローナの体はパンッと弾けて水になる
(水人形か・・・)




静かにサリアの背後に水の巨人が現れ、大きな握り拳をサリアに向かって振り上げる・・・




水の鉄槌ウォーターハンマー!!




サリアは剣を背後に集めてその一撃を受けきる・・・

「はは・・・やはり、水魔法は小細工ばかりで火力に乏しいのぉ」

さらに腕を振ると水の巨人がサリアの剣に斬り刻まれて弾ける・・・
弾けた大量の水は周囲に大きな水たまりを作る・・・




サリアの足首が暖かい水につかる・・・



暖かい?



水たまりから発生した蒸気が森の冷気にさらされ濃く白く曇る・・・



霧か・・・



背後から風切り音が聞こえる
サリアは剣でそれを弾く。
氷の刃か・・・小賢しい・・・



サリアは全身で魔力を発する・・・
(来い・・・鉄鳥・・・)



クガァアアーーー



金属の擦れる音とともに巨大な鉄鳥が空中から羽ばたいて飛来する。
周囲の霧をすべて吹き飛ばし・・・煙は晴れていった・・・




アクア「・・・」
目の前でアクアローナはにこやかに微笑んでいた・・・



サリア「・・・お主の負けじゃ・・・もう打つ手はなかろう?」




アクア「・・・いいえ」




・・・どうやら私の勝ちのようですわ・・・鉄の魔女サリアーデ様・・・




サリア「はぁ?・・・何をゆうておる・・・」
周りの景色がグラグラ揺れる
鉄鳥が正面にあっけなく倒れる・・・



サリア「?」




なんだ・・・何が起こっておる?・・・




アクアローナが手を握る・・・
地面の水たまりから出現した腕がサリアの体を握って拘束する・・・
ギリギリときつく締めあげる・・・




魔力吸収マジックアブソーブ・・・私の奥の手ですわ・・・




サリアーデ様の足首の水たまりから魔力を吸収していた・・・
常人ならばあれだけ急激に魔力を吸い取ったら気づきそうなものですが、
彼女の魔力使用量は尋常でないため吸収されていることにも気づかなかったようですわね・・・


というか・・・もし、気づかれていたら・・・
負けて・・・今頃、串刺しでしたけど・・・ね



アクアローナはふっとため息を漏らした。














サリア「祈りはすんだか?」
アクア「ええ・・・」




アクア「私が負ければ・・・二人分の命を差し上げますわ」

サリア「せいぜい足掻くことじゃ・・・万が一にもワシが負ければ、好きな命令を何でも聞いてやろう」