ウツロ 空の旅と索敵陣形


空の旅




「一回だけ、一回だけスロットを回させて下さい」





懇願するミラ
任務地は、ここから山ひとつ超えた場所にあるのだが、
それなら『移動魔法』の出番だろうと主張するのだった。



ウツロ「このあたりかな・・・よしいいぞ」



ウツロはミラから30mほど距離をとる。
30mはミラスロット発動時、最低限あけるべき距離である。
それ以上あけすぎて『何の目』か わからないのも それはそれで危険であった。

ミラ「・・・」
(この距離が・・・私の魔法に対するウツロ先輩の信頼度・・・くッ)




ミラスロットーー!!・・・・『飛』の目!!





ミラ「当たった!!」
そう言って全力でこちらに走ってくるミラ・・・

(発動まで・・・3・・・2・・・1・・・)
ウツロの腰に飛びつくやいなや・・・ミラとウツロの体はふわりと浮いて一気に上昇する・・・



・・・・ッ!!!




気が付くと・・・雲が近い位置にある・・・
地面がものすごく遠い・・・



・・・飛んでる・・・




ミラ「どうです、すごいでしょ、これが移動魔法ですよ・・・ふふ」
おお、すごいな、これなら山を数分足らずで越えられそうだ。


・・・それにしても・・・


抱きかかえられているこの状況・・・
ミラの胸ががっつり当たっている・・・


気恥ずかしさのあまり、身をよじるウツロ・・・


ミラ「駄目!?」


危うく手が滑って、落ちそうになったウツロをミラはしっかり抱きなおす。
ミラ「駄目です、ウツロ先輩・・・落ちたら地面に叩きつけられて死にますよ!」



・・・死にますよ・・・



だああ・・・
ウツロの顔が青くなる。
空・・・飛んでる・・・なんて呑気に考えていたが、今ってそういう危機的状況だったのか
ミラの腕力だけが頼りの危機的状況・・・ヤバいヤバいヤバい・・・



ミラ「ああ・・・なんだか腕がしびれてきました・・・」
おいい


ズルズルと体が離れそうになる・・・
ウツロは強引にミラの体に手を回して抱き付く。



ミラ「!?」




ミラの体が少し震えた気がした。
どくんどくんとミラの鼓動が聞こえる・・・

ウツロ「すまん、不可抗力だ」
ミラ「・・・いえ、別に・・・」

(ウツロ先輩から強引に・・・うう)
心なしかミラの顔が赤くなっているように見えた。



ミラ「・・・この魔法は・・・使えますね」



ぽつりと漏らすミラ・・・
(次回があったら、絶対に避けてやる)
ウツロはそう心に誓うのだった。




$$$





地面を歩くウツロと・・・その数十m上を浮遊するミラ・・・
ミラのブーツにはウツロの釣り糸が巻き付けられており、
風に逆らえない風船状態のミラを繋いでいる。



ウツロ「1時間で効果が切れるんじゃなかったのか?」
ミラ「今日は長いみたいです」


返事をするミラ・・・呑気だ。



今日の任務は・・・



兵士鰐アリゲイツソルジャーか・・・群れると厄介なんだよな





と索敵陣形






ミラと離れられてよかった・・・あんまりくっつき過ぎると・・・お金を払わなきゃいけない気がしてくるし






無事山の向こう側までたどり着いた。
山のふもとの上空数十mをふわりふわりと漂っている。


ウツロ「よし、下ろしてくれ」
ミラ「無理です」



は?



【『飛』の目 効果説明】
この魔法は地面に対して反発する『斥力』を発生させる魔法で、『一時間位』効果が持続します。
現在は、ウツロ先輩という重りで『斥力=重力』差し引きゼロの状態でバランスが取れています。
羽毛みたいな状況で風に逆らえないですけれど、仕方ありません。
しかし、仮にウツロ先輩が地面にうまく飛び降りたら・・・
私の『斥力』が勝ちすぎてしまって、前みたいに上空の彼方まで飛んでいくことになるんです。
あのとき本当に寒かったな・・・


ミラ「一時間くらい、こうしててもいいじゃないですか・・・」


なんだかミラは上機嫌だ・・・
いいわけあるか




ウツロ「・・・よし、じゃあこうしよう・・・」




・・・




1時間後、
ウツロは地面に立っていた。ミラはまだ浮いている。
ミラのブーツには『釣り糸』が括り付けられており地面のウツロとつながっていた。











ランダムだからもしかしたら当たるかもしれない・・・
そんな移動方法嫌だ