【行商人編】バンリはウツロの弱さを指摘する
剣先に魔力を垂らして剣を勢いよく振ると
木の枝がバッサリ斬れて落ちる。
おお
騎士達から歓声が上がる。
拍手と小銭を投げる者も少々
やめろ、大道芸じゃないんだから
実際にやってみてもなかなかできないようだった。
当然だろう、俺だって初めて枝を斬るまで1年ぐらいかかったしな
「お、枝切れたぞ」
・・・く
バンリは離れた場所でスクワットをしている。
おいこら俺が懇切丁寧に講義をしてるのにお前も聞けよ
「はん、私は魔法なんて知りたくもない、そんなの弱っちい奴の使う技だ」
出たよバンリの魔法嫌い
『魔法が使えるなら騎士たちに色々教えてやって欲しい』
その当時、魔法に対する知識が乏しかった騎士国では、旅の魔術師や魔女を講師として招き入れていた。ウツロの滞在も一環だったらしい。
俺なんて魔法の初歩の初歩しか知らないのに意味あるのだろうか
「それでも小国の俺らにとっちゃあ いい情報源なんだよ、たくさんの情報を集めて検証しないと騙されていても気づけないからな」
本命にもなれない当て馬ということか・・・
なんかやる気無くすな
「つまりだ。私たちは、ひょろっちいお前を逆に鍛えてやるって事なんだよ」
バンリはしごく気満々だ。
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騎士国に来て5日が過ぎた・・・
ウツロの筋肉痛はピークに達していた。
動くたびにビリビリ痛い。
そして、ここにきて驚きの事実を耳にする。
バンリは王の三女でお姫様であるらしかった・・・
バンリ「姫騎士って奴だな・・・ん?どうした?」
・・・バンリが姫騎士
・・・『姫騎士』という単語の放つ期待感に謝って欲しいんだが
バンリ「言いたいことがあるなら聞くが?」
ウツロ「別に」
「お前が弱い理由を教えてやろう」
こっそり筋トレをするウツロ
その当時の西の国々の国際状況の話をしよう。
西の国々は2つの選択に揺れていた。
『魔法技術を積極的に取り入れるか?』『魔法技術を禁止して拒絶するか?』
クラスティア王国は、魔法技術によって、敵国を退け、崩壊しかけた国を立て直し、他国が羨(うらや)むほどに発展し続けている。
クラスティアにならって多くの国が魔法技術の獲得に躍起になったが・・・
ラグベール王国の崩壊によって風向きが変わる。
魔法によって一夜で滅びたラグベール国・・・その事件が与える影響は魔法技術の導入に待ったをかけるに十分すぎた。
今現在、ラグベール王国の魔導士の残党や盗賊に悩まされる日々・・・
西の小国の王たちは悩む・・・そして結論はまだ出ない・・・
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騎士国の王は酔狂だ・・・ウツロはそう思った。
出生も身分もあやふやな怪しい人物を自国の騎士達と一緒に訓練させるなんて。
終いには
「お前もひょろっちく見えるから ついでに鍛えていけ」
なんて言われる始末・・・