ケーリーと恩師


ケーリーと恩師




魔法協会本部の一室にて、




ケーリーは経理部トップからお茶をご馳走になっていた。
経理部のトップはモノクルが特徴的な穏やかなお婆さんだ。
そして、前魔法学校講師でケーリーの恩師でもあった。


「今回の経理マニュアルの提供と指導・・・本当に役に立ったわ」
ケーリー「・・・どういたしまして」



ケーリーの受け答えはぎこちなくぎくしゃくしていた。



魔法学校に在籍していた時、彼女に刺々しい態度を取ってしまった。
その過去が、わだかまりとして残り続けているからだ。本人はまったく気にしていないようだが・・・



彼女が昔、アウディーネ家の家庭教師をしていた時、
幼いアクアローナは大変なサボり魔だったらしい。



「アクアローナ、今日は眠らずに話を聞くのですよ」
「はい、先生」

今日は珍しく真面目に話を聞いていると思ったら・・・

「・・・ということなので、こうなるわけです、わかりましたか?」
「はい、先生」

途中から彼女の背が縮んできて・・・タプタプに太っていた。

「・・・あの、背が縮んでいませんか?」
「はい、先生」



そのアクアローナは水人形ウォータードールという彼女の魔法だったらしい。
授業はその人形に任せて、本人は街へ遊びに行っていた。


ケーリーはその話を聞いて反発した。
「私の憧れのアクアローナ様がそんなことをするはずがないだろう」と
自分でアクアローナ様の過去を聞きたいと問い詰めたのにそんなことで怒ってしまうなんて・・・
今となっては恥ずかしい過去だった。



ケーリー自身アクアローナ様本人にその後すぐ会う機会があり・・・
彼女の話が真実だという根拠を突きつけられることになる。


ミラと友人になって間もない頃に彼女の家に招待された時のことだった。
『れでぃーす』のチームの解散報告をするから見届けて欲しいと言われた。



ミラ「スカーレットは・・・解散することにする」




メルビア「ようやくわかってくれたか・・・姉として少し嬉しいぞ」

涙ぐむ年上の女性・・・
後ろの人物がアクアローナ様か・・・
想像よりずっと美人でキラキラして荘厳な雰囲気もある。
おっと何か言いそうだ。




アクア「ええ、解散?・・・それは困ります」




メルビ「!?」



アクア「・・・新しいコスチュームが・・・もうすぐ完成なのに」
せっかくいい方向に改心しかけているのに・・・何を言っとるんだ!!




アクア「・・・わかりました、仕方ありません」




アクア「こうなったら、私が2代目を・・・」
メルビ「それはマジやめて」
あなたは秩序を守る方の元締めなんですよ!


ケーリー「・・・」


だからと言って、尊敬が揺らいだわけではない。
ただ少し、自分のイメージと差異があっただけだった。



「アクアローナは・・・今は亡きアルザス=アルマティアと出会って変わった・・・私はそう感じています。人との出会いはその人を大きく変える力がある。あなたはどうかしら?ケーリー=エクセル」



・・・そんなことを言ったら、私はミラとアクアローナ様に出会ったから魔獣討伐部の魔女になることを あきらめた みたいじゃないか・・・




「ケーリー、あなたの経理の腕は魔法協会に大きく貢献している、それだけは忘れないで」




「過去を後悔しては駄目です、そして、未来のことは誰にも分らない」
未来はわからないわ、あなたが魔獣討伐部にいることも・・・もしかしたら魔法協会のトップに立っていることも・・・あるかもしれないわね


ケーリー「そんなことは・・・あり得ません」



「・・・ふふふ・・・あなたって、魔法学校の頃と全然変わっていないのね」

気恥ずかしさを隠すようにお辞儀をして、彼女の部屋を後にした。






相手は 経理部トップ


ケーリーにお茶を勧める


イファース=ロドス