『vs白馬 その1』
「お互い恨みっこなしだ、全力で勝負しよう」
爽やかな白馬との握手で試合が始まる。
都大会予選・・・
ここで3回勝てば・・・全国大会への出場が決まる。
その3回戦・・・白馬と対戦することになった。
表情はなんとか平静を取り繕おうとした・・・
内心・・・黒峰は怯える。
白馬と相対することに・・・心底怯えていた。・
なんでだよ・・・どうしてだよ・・・意味が分からない・・・
戸惑い、動揺・・・
俺は平常心を保てなかった・・・
気持ちを必死に押さえつけて冷静になる。
全力で戦っても・・・
開いていく点差・・・
勝てない・・・やっぱり・・・勝てない・・・
舞浜は遠慮してか両方にエールを送る。
どちらに送るエールに気持ちが籠っているかなんて明らかだ。
「・・・」
ああ・・・ああ・・・・ああああ・・・・あああああああ・・・あああああああああああああああああああああああああああああ
涙がポロポロとこぼれる・・・
観客は汗だと思うだろうか・・・
もういいじゃないか・・・
負けてしまっても・・・
なぜ自分を追い込むのか元々意味が分からなかったんだから・・・
ちくしょう
舞浜のエールが自分への応援だったら・・・どんなに良かっただろうか・・・
たくさんの剣が自分にグサグサと刺さるのを感じる・・・
ふらついて、そのまま・・・崖から落下しているような気分だった・・・
汗が血液の様にボタボタと零れ落ちて止まらない・・・ははは・・・
抜けていく力・・・
頑張れ、頑張れと叫ぶサッカー部員たち
なんでいるんだあいつら・・・
どうせあいつらも無様でピエロな俺を持ち上げて騒いで喜んでるだけだろ・・・
もう何もかもどうでもいい・・・
$$$
黒峰・・・なんて顔・・・してんだよ・・・
それがなぜかはわからないが黒峰の顔はとても憔悴していた・・・
サッカー部員たちは・・・ボロボロと涙を流す。
馬鹿野郎・・・
俺たちはそんなお前を見たかったんじゃないんだよ
フェンスにしがみついてサッカー部員は次々叫ぶ。
「黒峰!!!頑張れよ!!!俺たちはお前のこと応援してるぜ!!!」
「ああ!!そうだ!!!」
「頑張れ黒峰ーーー!」
$$$
無意識にボールにだけは最後まで食らいつく・・・
転んで弱弱しく立ち上がる。
なぜだ?
こうなるとわかっていてなぜここまで頑張った?
・・・
・・・・
そんなこと決まっている・・・
もし勝てば・・・
強くなれば・・・舞浜に・・・
『振り向いてもらえるかもしれない』って思っていたからに決まってるだろッ!!!
ラケットを握る手に・・・力が戻る・・・
強く・・・ボールを叩く
放たれたボールは直線状にネット上に待ち構える白鳥へ飛んでいく
「フラットボール・・アウト?」
ボールを見送る白鳥・・・ボールの軌道は彼の予測からズレて・・・ストンと落ちる
「入った」
(いつもの刷り上げるスピンボールじゃない・・・フラット気味に強く叩くことで・・・回転量が増しているんだ・・・)
こんなこと言うのは他の部員に悪いってわかっているんだが・・・
勝ってもさ・・・何も心が満たされないんだ・・・
・・・黒峰君・・・それは・・・ハングリー精神って奴だね!・・・
やっぱ、黒峰はすげーな!!
黒峰っ
黒峰っ
黒峰は・・・ため息をつく。
意味わからんけど・・・ちょっと冷静になるか
先生
どうせ1回戦で負けると思ってトーナメント表など見ていなかったが・・・