オリジナル小説

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100年前の出来事



「おい聞いたかよ。カルデラ軍に入った新人のこと」
「ああ、聞いた。銀髪ですげえ美人なんだってな」
「いや、昨日、ロズワード自治軍とやりあって、無傷で大将を屈服させたって・・・」
「・・・マジかよ」



デシベル王「そなたのロズワード侵攻のおりの活躍、まことに見事であった。」
アーシェ「そのようなもったいなきお言葉、ありがたき幸せに存じます。」
デシベル王「何か、望みはあるか?なんなりと言ってみよ。」
アーシェ「・・・・では、与えることのできる恩賞をすべて、我が父ヘルツにお与えください。それが我が望みであります。」
デシベル王「・・・・はははは、なんと、親孝行な娘よ。気に入った。そなたを我が直属の騎士団に加えよう。もちろんそなたの父ヘルツの階級もさらに上げようぞ。」
アーシェ「ありがたき幸せ、」




アーシェ「ただいま、お父さん」
ヘルツ「アーシェ、ありがとう、お前のおかげでまた出世できた。」
アーシェ「どうしたしまして」
ヘルツ「父さんは嬉しいが、できればアーシェもう軍なんか危ない仕事はやめて欲しい。私はお前の安全の方が心配だよ。」
アーシェ「心配してくれて、ありがとう、わたしのことは大丈夫だから」



もっと、お父さんに恩返しするんだ・・・




・・・・・・




使い魔「不思議です。」
使い魔が叫んだ。
キロ「どうした?」



使い魔「この時代の人々は、こんな紙切れをお金って呼びますよね。」
キロ「ああ、100年前は金貨とか銀貨だったけ?」
使い魔「こんな紙切れに金貨と銀貨と同じ価値があるなんて不思議です。」
キロ「金貨なんていちいち持ってたら、重くってしょうがないだろ、国同士の信用があるから成り立つんだよ」
キロ(経済とかよくわからないけど)




使い魔「お金、お金、・・・キロさんは以前に、
悪魔退治はお金をもらえないからやりたくないっておっしゃっていましたよね?」

キロ「働いて、お金をもらうのが仕事だ。お金をもらえないなら、仕事じゃない」



ただ悪魔を倒すだけ・・・
キロは悪魔をすべて倒すと心に決めることにした。
(『来ないで!!』ボルカ火山でのシスターさんの言葉が突き刺さる。
悪魔を倒すことをやめてしまったら、
なぜあそこで白い剣を捨てて逃げなかったのか
村人を全員殺したのか分からなくなる)




キロ「そのお金は、どうしたんだよ、ちょくちょく工面してくれるお金はどこから稼いでるんだ?」
使い魔「・・・・いや、その・・・」
使い魔(言えない・・・カルデラの宝物庫から白い剣と一緒に盗んだ盗品を売ったお金だなんて・・・)




使い魔「そういうキロさんこそ大丈夫ですか、このところ顔色も優れないですし」
キロの様子はどんどんおかしくなっていった。
目には大きな隈があるし
白髪も増えてどんどん痩せていく


キロ「前からずっとだけど心臓のあたりになんかもやもやしたものがあって悪魔を退治するたびに心臓のもやもやが大きくなっていく気がするんだ。」


使い魔「へえ・・・」
使い魔(言えない・・・キロさんの体調不良は悪魔退治のせいだなんて)
使い魔は感じていた。
キロの心臓には大きな魔力の塊があることを
白い剣は魔力を吸い尽くすが、それは使用者の心臓に蓄積していくのだろう。
その蓄積した魔力は使用者に決していい方向に作用しない。
使い魔は口をつぐんだ。
使い魔の目的は天使との契約を解消して自由になること、
ここでキロに魔力のことを教えるようなことは自分のマイナスにしかならないと思ったからだ。



使い魔(ああ、キロさんは本当に可愛そうな人ですね)




使い魔「もう少しで村が見えてきますよ。」
キロ「この辺はよく知ってる。俺の生まれ故郷だからな」
使い魔「へえ、ということはキロさんのご家族が住まわれているんですね」
キロ「俺は孤児だから家族はいないよ。」
使い魔「・・・すいません。失礼なことを」
キロ「いや、別にいいけど、そのかわり、生まれ育った孤児院があるな」




ジーメス村の孤児院
100年前、カルデラの将軍が地位も名誉も捨て
自らの資産をすべて投資して立ち上げた孤児院だった。
すでに100年の歴史を持つ由緒正しき孤児院であるが
基本赤字経営で近年は寄付もめっきりなくなり
倒産寸前であったこの孤児院で最近、院長に就任したのが
マクセルという男だった。
彼の経営手腕のおかげで孤児院は崩壊を免れた。
キロが物心つく前から親として見てきたのもこのマクセルであった。



マクセルは右も左も分からない子供にすらこう教える。



マクセル「あなたたちは自分の利益を追求しなさい。
利益とは、よりお金を稼ぎおいしいものを食べ、良い服を着て、大きな豪邸に住むこと
私は、あなたたちが、最大の利益を得られるように育てるつもりです。
なぜならば、立派に育った人物を輩出することによって、私の利益になるからです。
そして、将来、利益を得られたとき、恩返しすることを忘れてはいけません。
受けた恩を必ず返すことは大切なことです。」


マクセルは子供を商品として育てた。
しつけの行き届いた子供を輩出することで利益を得た。
さらにその子供達からも寄付を募った。


キロは多少運動神経のいい子どもとして育てられ
カルデラ国の城の警備兵として
士官学校へ入れられることになる。