新 キロと13匹の悪魔

新 キロと13匹の悪魔

アーシェ仲間入り編







「私は・・キロをだまして、陥れて、彼の人生を無茶苦茶にしたわ、今更彼の前に姿を見せれない、でも、命は必ず助ける、それが私のけじめだもの」







キロと使い魔はハインベルンを目指して歩く。


使い魔「キロさん、ずいぶん周りを気にしていますね。」

キロ「ああ、アーシェに追跡されている可能性があるからな」


使い魔(多分、近くで監視していると思いますけど・・・)


ただし、ご主人の尾行はとても上手いので、普通の人間では気が付かないほどです。
キロさんカルデラではご主人の尾行に全く気付いていませんでしたし

ご主人はどとらかというと騎士というより暗殺者・・・


使い魔は後ろからの刺すような視線を感じて考えるのをやめた。



使い魔「追ってきちゃダメなんですか?命を助けてあげると言われたんでしょ。」

キロ「・・・・・意味がないからだ。俺の命が助かる見込みはもう全くないって言っていい状況なんだ。」

使い魔「キロさんには悪いですが、あのイデアという女性ほど悪魔や魔力について精通している方はいないでしょうから、その方が助からないと言うのなら可能性はないのでしょうね。」

キロ「・・・・」


使い魔「でも、まあ、助けるべく動いてくれているなら泳がせておけばいいのでは?」

キロ「・・・・俺なんかのためにあの英雄が時間を割くなんて間違ってる。カルデラのことは俺だけが決着をつける問題なんだから」



使い魔(・・・・どうして、そこだけは頑固なんでしょうか?)



パサナ山脈はカルデラ国とインバース国の境目に位置している。海運が主流となった現在でも最短徒歩で抜けることができる峠道は急ぎの旅人が頻繁に利用する。



キロ「いい眺めだなー」
使い魔「そうですね」



使い魔「こんな高い標高の場所はもっと寒いと思っていましたが、」
キロ「今の季節だとそこまでひどくはならないだろ」

と思っていた。しかし、上るにしたがって雲行きが怪しくなり、雪が降りだした。



使い魔「このまま吹雪になったりして」
キロ「そんなまさか・・・」


雪はどんどん激しくなり、前を見ることもできなくなった。


使い魔「このまま凍えてしまって、夏に白骨になって発見されたり・・・」
キロ「もうやめろー」


キロ「・・・・・使い魔?」
いつのまにか使い魔の姿がない・・・



キロの意識が遠のく・・・





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キロが目を覚ますとベットに横になっていることに気が付いた。


暖かい・・・暖炉がある。暖炉にまきをくべている人物は・・・銀色の髪の・・・カルデラの英雄


アーシェ「あら、目が覚めたのね・・・」
キロ(・・・・白い剣がない・・・)


キロ(服を脱がされている・・・)
アーシェ「乾かしているだけよ・・・」
アーシェ(このシチュエーション、ふつう逆じゃない?)


アーシェは何か暖かい料理を作っているようだった。


キロ「・・・使い魔は?」

アーシェ「吹雪で倒れているあなたと一緒に連れてきた、急用ができたと言って出て行ってしまったわ」
キロ(・・・・あの野郎見捨てやがったな・・・)




アーシェ「でも、ちょうど良かった。一度あなたとゆっくり話してみたかったし」




アーシェ「寒いの?・・・震えているわ」
キロ「別に」


キロはアーシェの作ったスープをすすった。
キロ「・・・・一応・・・ありがとう」
アーシェ「これくらい礼には及ばないわ」






キロ「・・・悪魔退治するなとか、もう注意しないのか?」
アーシェはキロの顔をじーと見た。

アーシェ「ええ、好きにすればいい・・・その代わり私もあなたの命を救うのをやめないわ。」
キロ「それは、やめて構わない。・・・結局、一年たたず俺の死体が転がっているだけになって時間の無駄だったって嘆くだけだぜ。」


アーシェ「・・・キロ、人生がうまくいくコツを教えましょうか。うまくいく、そう信じるだけでたいていのことはうまくいくように出来ているの、少なくとも私はそう信じている。」


キロ「・・・傲慢だな」
アーシェ「・・・キロは謙虚過ぎるのよ」


キロ「・・・うまくいく、いかないじゃない。俺は価値がないって言ってるんだ。」
アーシェ「・・・価値はあるわ」
アーシェ「・・・・」

アーシェはふくれている。機嫌が悪くなったようだった。




それから、キロが眠りについた翌朝、村への地図を残して、アーシェはいなくなっていた。