オリジナル小説
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廊下を歩きながら
社長「最近、社員が失踪するという件はどうなったのかね?」
秘書「それに関しては、まだ、調査中です。そもそも失踪したのかさえ分からなくなってきたわけでありまして」
社長「おいおい、しっかりしてくれよ、ははは」
社長(・・・・ふふふふ、起業してから20年、本当に長かった。すべては私の才能と人脈と努力の結果、そう私という人物の存在が一流企業の社長としてなるべくして社長になったんだ。)
感慨にひたる社長のすぐ前に何かが横切るのを感じた。
社長「???」
何かぬるっとしたものが、体に巻きついて、自分の体から魂のようなものが抜けるのを感じた。
社長「では、例の資料をみせてもらえるかね?」
秘書「・・・・あのどちら様でしょうか?」
社長「はははは、なんの冗談かね」
秘書「あいにくですが、このフロアは役員の方以外立ち入り禁止なので・・・」
社長「・・・・・え?」
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使い魔「キロさん、これは予想ですが、影の薄い悪魔は、影の薄い自分の存在を保つため他人の存在を食べるんです。食べられた人間は、地位も人間関係も失って、文字通り存在を奪われるんです!!」
キロ「へーーー」
使い魔「係長だったというあのひともきっと被害者なのですよ!!悪魔を退治すればかれもきっと元通りになりますよ。」
キロ(誰の話だっけ?)
「兄ちゃん、いくら、かわいいからって職場にペットを連れてきちゃいかんよ」
キロ「あ、すいません、すぐに追い出します。」
キロ「ってわけだから、」
キロは使い魔を放り投げた。
使い魔「あーちょっとー」
見慣れない50代の老人が慣れない手つきで荷物を運んでいた。
キロ「大丈夫ですか?」
「いや、すまないね」
休憩中
キロ「もしかして、新人さんですか、お年なのに大変ですね」
「・・・・信じてもらえないだろうが、わたしは、ここの社長だったのだよ」
キロ「社長・・・ってまさか」
キロの脳裏に使い魔のセリフが蘇る。
キロ「あの、あの、係長さん、係長さん」
係長「はは、何かね、私をそう呼んでくれるのは君ぐらいになってしまったなぁ・・・」
係長は今日は機嫌が良さそうだった。
キロ「あそこにいるひとってもしかしてここの社長さんなんですか?」
係長「何ぃ、社長だとぉ・・・・いやわからんな・・・・というかわたしは社長の顔をまだ見たことがないし、お会いしたこともないのだよ、ははは」
キロ「ええ」
係長「係長のわたしがいうのもなんですが、社長というのはいささか言い過ぎでは?」
社長「いや、本当に社長だったから」
「じゃあ、俺は部長だったような・・・」
「わたしは、南国の支部長がいいなぁ」
「ははは、そのギャグ面白ーーい」
「ははははっは」
キロ(ああ、すごくややこしいことになってる・・・)