オリジナル小説

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劇場悪魔
ひとの記憶を読み取り幻を見せる悪魔
すべての人生は劇的であらねばならないと考える
道化師のかっこうをしている




おじいさんはその日夢を見た。
道化師の男がおじいさんの夢枕に立ちこうつぶやいた。




「1日ごとに家族が消える。消されたくなければ眠らないことだ」




朝、おじいさんがいつものように起きて朝食を取ろうとすると
いつもとなりに座っているおばあさんがいない
おじいさん「おばあさんはどうしたんだね」
息子「・・・・?誰のことを言っているんだい?」
息子と息子の嫁と孫がいる。
しかし、おばあさんがいない。


朝食の後、仕事を息子に任せて家の中を捜しまわった。
おばあさん、妻の部屋に何もなく、おばあさんがいた痕跡さえすべて消えていた。


おじいさん「そ・・・そんな・・・」
おじいさんは戦慄した。
おじいさんの記憶には、確かに、おばあさんの記憶がある。
これがすべてまやかしだとでもいうのだろうか


孫「おじいちゃん、どうしたの、どこか痛いの?」
まだ、小さな孫がおじいさんの服を引っ張った。
息子の妻「こらこら、おじいちゃんに世話をかけちゃだめでしょ?」
おじいさん「いやいやエリアさん、今日は孫と遊びたい気分じゃ」


孫と遊んだ疲れからか、おじいさんはぐっすりと寝てしまい翌日の朝


今度は、孫が消えていた。
息子「俺たちに子供がいればなぁと思うけど、まだ、孫はいないんだよ」
息子の妻「申し訳ありません。私も早くお孫さんの顔をお見せできればと思うのですが」


やはり痕跡も残っていない。
おじいさんははっきりとあの薄気味悪い声のお告げを思いだしてきた。




寝てはいけない・・・・




その何日間か、おじいさんは明かりを灯して必死に眠気と戦った。
朝になり気の緩みからか少しうとうとしてしまうと
息子「俺にもいいひとが見つかればって思うけどさ・・・」


おじいさん「ああああああああ・・・・」



おじいさんはついに倒れてしまった。
息子は仕事の合間をぬって必死に看病してくれた。
おじいさん「すまないな・・」
息子「いいっこなしだって、俺さ、父さんの息子で本当によかったって思うんだ。ゆっくり休んでくれよ親父、何日だって看病するからさ」


その何日か、おじいさんは必死に眠気と戦ったが・・・・
気がつけば息子は消え、この家にいるのは自分ひとりになってしまった。



以上『孤独な老人』というタイトルでいかがでしょう?




「うーーーん、素晴らしい。人が不幸に堕ちていく様は、本当に悲劇的で心が揺れる。家族同士が殺しあう物語は少々飽きてきたので、ここらへんでこのような話を入れるのも悪くありませんね。」



うーーーーーん次は・・・・


道化師の男は屋根に上ってあたりを見回した。
そして、キロの姿を見つけた。
「面白い素材ですね。」


劇場悪魔は次のターゲットをみつけたのだった。