『はたく』

『はたく』




和菓子屋のおばあちゃん




孝一が良くお使いに行く和菓子屋のおばあちゃんは自分のことを『異世界出身』だと言い張る。

孝一は小学校の帰りによくここを通っていた。
婆ちゃん「孝一・・・今日は帰りかえ、ほらほら作りそこなった饅頭をやろう。」
孝一「わーい」


饅頭には『異世界』と印字されていた。
孝一「これなんて書いてあるの」

婆ちゃん「・・・」





召喚獣として異世界召喚される孝一





ある日、孝一が壁を殴っていると自分の周囲3mの地面が光り輝きだした・・・何かよくわからない文字が印字されている。これは俗にいう魔法陣というやつだろうか・・・次の瞬間自分の周囲の空間が見たこともない風景に変わった。


目の前にあった壁が消えている・・・



孝一「まさか・・・ついに『はたく』が完成したのか・・・」



まあ、そんなわけもなく・・・





自分の周囲は暗い森に見えた。葉っぱの色が緑色ではなく黒色だった。なんだか薄気味悪いな・・・




『あ・・あの・・・』
異世界



誰かの声がする・・・女の人の声だ。誰かの声に似ているな・・・
声の主は背の低い女の子・・・


孝一「大海・・・」


大海がそこにいた。若干髪の色が紫がかってるな、染めているのだろうか?・・・あとなんか変なかっこをしている。そう黒い衣装に淵の大きな帽子・・・これは魔女のかっこだろうか。


孝一「・・・大海にそういうコスプレ趣味があるなんて知らなかった。・・・まあ、なんだ、俺はそういうのに偏見とかないから・・・」



『・・・何かしゃべっているけど・・・言葉が分からない・・・』
異世界





孝一は大海らしきひとをマジマジと見た。うーん似てるけど微妙に違うような・・・
大海らしきひとは、自分の胸に手を当てて自己紹介らしきことをした。


『・・・私の名前は・・・オーミー=アーカーリー・・・です。』
孝一「・・・・」


孝一(やっぱり、大海じゃん・・・)



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さっきからしきりに何かしゃべっているけれど、何を言っているかわからない・・・


オーミーは孝一の周りに魔法陣があることを示し、事のあらましを絵にかいて説明していく。
『私が魔法陣を描いた』⇒『あなたが出てきた』⇒『あなたは戦う』




召喚獣っぽい単語を連呼している・・・



召喚獣・・・いつかのユズハ師匠の修行のときだった・・・


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ユズハ「さーて、今日の冒頭の余興は、テレビゲームです。最近発売された『ドラゴンテイスト30』って知ってる?今ちょうどいいところなの。」
孝一(もはや、ユズハ師匠の趣味紹介になってる・・・)


孝一「この『召喚獣』ってなんですか?」
ユズハ「これは主人公のために戦う召喚された精霊のことよ。一定時間戦ってくれるわ。」
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つまり、俺は召喚獣として召喚されたということなのか・・・





オーミーはボロボロの分厚い本を取り出した。
開いたページには魔法陣が描かれており、地面に描いたものと一致しているようだった。隣に挿絵があって、蛇のような怪物が描かれていた。

オーミー『・・・・挿絵と全然違う・・・』
オーミーは不審者を見るような目つきで孝一を見た。


(・・・絵と違うぞ、お前は、誰なんだ?って言いたげだな・・・)




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vsオーク



お腹が空いているようだったので、孝一の持っていたお弁当のサンドイッチを半分大海に渡した。



オーミーは地面に絵を描く、
総合するとこの森で迷ってしまって、化け物のせいで森の外に出れないらしい。オーミーから疲労の色が見えた。



ウオオオオオオオオオン



怒号のような声が響いた。
オーミーはその叫び声を聞くとぶるぶる震えだし、地面にうずくまった。



オーミー「オーク、オーク」



オーク?
そんな単語ももユズハ師匠のゲームの中で出てきたっけ、図体のおおきな化け物


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ユズハ「・・・ああ、もうこのキャラ使えない。私だったら、絶対『受け流し』でダメージなんて受けないのに・・・」
孝一(・・・「自分がゲームに入れば負けないのに」と言っちゃう師匠って・・・)

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2mほどの薄緑の巨体で棍棒を持った化け物の姿が見えた。
こっちを襲う気まんまんって感じだ。



孝一(・・・前は熊に負けたからな・・・ちょうどいいリベンジだ。・・・さあ、来い西洋熊・・・)



オーミーは木の陰に隠れながら孝一の様子を見た。
オーミー(・・・ダメだ。逃げろって言わないと・・・声が・・・出ない・・・)



孝一はゆっくりと歩いて距離を詰める・・・




オークは腕を大きく振りかぶって渾身の力で棍棒を叩き付ける。
オーミー『逃げて!!』


棍棒は・・・孝一に当たる寸前で軌道がズレて地面をえぐった。



・・・それが真田流なんだって思えば、それが真田流・・・攻撃を受け流して隙ができたところに・・・




孝一の姿勢が低くなった瞬間・・・音のない衝撃が走る。オークは白目をむいて、仰向けに倒れて動かなくなってしまった・・・





魔法?・・・いいえ、魔力の気配なんて全くなかった・・・じゃあ今何をしたっていうの?




オーミーが孝一のことを化け物を見る目で様子をうかがっている。木の陰に隠れて出てこない。
孝一(・・・なんか怖がらせちゃったかな・・・こんなときは・・・)




孝一「・・・大丈夫・・・こんなのただ はたいた だけ」




オーミー『???・・・はたく?・・・』