囚われの大海さん
大海の周りの景色が変わる。
目の前には自分とそっくりの女の子が疲労困憊で膝をついているのが見えた。
あたりは廃墟で建物の所々が焼け焦げて火事になっていた。
オーミー『・・・あなたは・・・誰?・・・私は黒いアンデットの召喚獣を呼び出したはずなのに・・・』
※異世界語
大海(何語?・・・いや、少なくとも英語でないことはわかる・・・)
オーミーは混乱して頭をうまく整理できていないようだった。
今は・・・どういう状況だ?
落ち着け・・・こんなときこそ・・・真田流の『先読み』だ。
おそらくここは孝一君の話にたまに出てきた『異世界』であると仮定しよう。
だったら・・・
大海「・・・あなたが・・・探しているのは・・・黒い服を着た男子・・・水上君なの?」
大海はメモを取り出して、絵を描いて質問をする。
オーミー『ええ、そうよ』
大海「・・・私は・・・さっきまで・・・彼の隣にいた・・・」
オーミー『・・・なるほど・・・精神を安定させずに召喚魔法を使ったから・・・座標がズレたんだ・・・』
オーミーは落ち着きを取り戻してきた。
大海「・・・今は・・・どういう状況なの?」
オーミー『・・・正教会の軍が魔法学校に攻めてきた・・・奴らは魔法に対する特殊な装備で・・・魔法学校の結界をすり抜けてきた・・・結界以外の備えが薄かった魔法学校は総崩れで今はみんな散り散りに逃げているところよ・・・』
大海「・・・敵に攻め込まれて・・・旗色が悪いのか・・・」
大海はオーミーの隠れている廃墟からあたりを見回す。
豪勢な銀色の鎧を着た集団と・・・
黒い門のような体を持つふわふわ浮かぶ怪物がたくさんたむろしていた。
オーミー『・・・あれが正教会軍と・・・捕獲用の魔法生物『ドアドア』よ・・・みんなあの怪物に捕まって教会の牢獄に転送されてしまった・・・捕まったあとは・・・きっと処刑される・・・』
オーミーはうずくまってがくがく震える。
大海も正直・・・自分の力ではどうしようもない・・・この現状に戸惑っていた・・・
どうすればいい?
どうすればいい?
警察に電話する?
自衛隊に電話する?・・・圏外だ。
自分の中に・・・湧いてくる解決方法はひとつだった・・・
大海はオーミーの肩を掴んだ。そして、目を見て優しく語りかけた。
大海「・・・孝一君を・・・ここに呼んで・・・そうすれば・・・きっと大丈夫な気がする。」
大海はもう一度メモを取り出して黒い服の人物を描く。
オーミー『・・・あの黒い服のアンデットを?・・・無理よ・・・召喚獣一匹でどうにかなる問題じゃない・・・それに・・・アンデットは正教会軍の格好の餌食よ・・・』
大海「・・・今日の孝一君ならきっと・・・なんとかしてくれる・・・そんな気がするんだ・・・」
正教会軍『ここにも残党がいたぞ!!』
オーミーと大海は正教会軍に見つかってしまう。
とっさにカバーに入ったリヴァイアサンも正教会軍に蹴散らされてしまう。
リヴァイアサン「・・・すまない・・・魔法兵器に対して万全過ぎる上に・・・多勢に無勢だ・・・逃げろ・・・」
ドアドアがこちらに向かって飛んでくる。
大海はとっさにオーミーをかばう。
大海はドアドアのドアに吸い込まれて消えてしまった。
オーミーは必死に無様に背を向けて必死に逃げ出した。
正教会軍をなんとか振り切った・・・頑張れば学校の外まで逃げ切れるかもしれない・・・
オーミーは逃げたくなる衝動をぐっと息を飲んでこらえた。
あの女の子に助けられたんだ。・・・ここで逃げることはできない・・・
落ち着け私・・・落ち着いて・・・あの黒い衣装のアンデットを召喚するんだ。
魔法陣を描いて・・・術式を発動する・・・
お願い・・・成功して・・・
地面が輝く・・・
黒い衣装のアンデットが・・・そこに立っていた・・・
孝一「・・・やっぱり・・・『壁殴り』が召喚のキーだったか・・・」
※違います。