ウツロ 幽霊船と水魔女 その2
誰かの声が聞こえる・・・
目覚めるとそこにはスフィールさんの顔があった・・・
ウツロ「ぎゃあああ」
スフィ「どうしました?怖い夢でも見ましたか?」
現実、現実・・・
ウツロは魔法で眠らされていたらしい。
ウツロ「どうしてスフィさんは眠らなかったんですか・・・」
スフィールは水魔法の耳栓をしていたらしい。耐音魔法水 プロテクトウォーター という新種の魔法で音の魔法成分だけをある程度カットできる。なんて便利な・・・
ウツロとスフィールは甲板へ出て、辺りの様子をこっそりのぞく。
ボロボロの船がこっちへ近づいてくる。あの船から睡眠魔法が発せられていたらしい。帆もボロボロでどうやって進んでいるのかわからない・・・船には遠目に・・・動く骸骨たちが乗っているように見える・・・まさに幽霊船だな・・・
さて、どうするか・・・このまま接近を許すと乗客を危険にしかねないし・・・このまま寝たふりをして一度やり過ごすという手もある・・・
スフィ「飛びますわ」
飛ぶ?
ウツロはスフィールさんに小脇に抱えられ、ドンという音とともに空中高く高く飛び上がる。
幽霊船が一気に近づく、着地の瞬間幽霊船の船体がメキメキと軋む。ウツロ達は敵地のど真ん中に着地した・・・
「なんだ・・・今の音は」
「どうした?何が起きた」
「なんだ・・・お前たちは」
動く骸骨たちは半ば状況を理解できていないが、
とりあえず、ウツロ達を包囲する。
「へっへっへっ・・・飛んで火に居る夏の虫とはお前らのことだ・・・」
「・・・ん・・・おお・・・いい女もいるじゃねーか・・・」
「お嬢ちゃんよ・・・死ぬ前に天国へ いかせてやるぜ・・・へっへっへっ・・・」
くっ・・・卑劣な・・・
骸骨 守備範囲広いな ってちょっと考えたのは内緒
やっぱりあれくらい ふくよかな方が骸骨にはモテるのか・・・
ウツロ「スフィールさんは下がって下さい。」
スフィ「うるああああああ」
スフィールさんが両手をブンブン振り回して動く骸骨たちを蹴散らしていく。
おお・・・すごい・・・最近の魔女は体術もいけるんだな・・・俺必要なくない?
甲板の骸骨を倒し終えると・・・船全体が大きく揺れる。
甲板をぶち破って巨大な動く骸骨が姿を現す。体長およそ3m首が二つ、腕が4本、足が3本あった。
スフィ「亡者の王 グランドスケルトン・・・魔法協会指名手配Aクラスの魔獣・・・こんなところにいたのですね・・・道理で見つからないはずですわ・・・」
グランドスケルトンは勢いよく飛びかかり、腕に持った大剣を振り回す。スフィもうまく立ち回るが、一瞬の隙をついてスフィの首が飛ぶ。
ウツロ「スフィーさん!!」
沈黙するスフィールだったが・・・しばらくして・・・にょきっと首が生えてきた。
ウツロ(・・・生えた)
スフィ「・・・・仕方ない・・・少し本気を出しますわ・・・」
キレイな声が聞こえた。何オクターブか高い声・・・それはもうフルートのような・・・
ばしゃっとスフィールさんの背中が割れると中から青い髪の綺麗な少女が現れた。
スフィはじーっとこちらを見て言葉を話す。大きな声ではなかったがよく通る声なのではっきりと聞こえた。
スフィ「今から30秒時間を下さい。」
スフィールは淡い青い光を放ちながら集中して呪文を唱え始める。
あ・・・え・・・30秒ね・・・多分大丈夫
ウツロは『風切り』を放って、グランドスケルトンの腕を一本切り落とす。
奴は怒ってこっちへ向かってくる。ほらほらこっちこっち・・・って速ッ
奴の突進で船のめりめりと柵が壊れる。ウツロはしっかりと距離を空けつつスフィから引き離す。
駄目押しでもう一本腕を切り落とす、すぐ復活するみたいだが・・・
・・・よし30秒
大きなスフィールが海水を吸収して巨大化していく。彼女は船のマスト以上に大きくなっていく・・・
スフィ「・・・叩き潰せ!」
水神の鉄槌 ウォーターハンマー!
振り上げた大きなスフィールの手が虫をつぶすようにグランドスケルトンを叩いた。
振動が船全体に響く。というか・・・船が真っ二つに割れた。
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なんとか瓦礫につかまって息を整える。
誰かがおぼれている・・・小さいスフィーさんだった・・・
慌てて泳いでなんとか彼女を大きい船の残骸まで運ぶ。
スフィ「私・・・いままで水魔法でズルをしてたので実は自力では泳げませんの・・・」
・・・スフィールは海に手を漬ける・・・
「戻れ、我が眷属たち・・・」
水が集まる・・・大きいスフィールさんが復活した。服も着ていた・・・うん良かった。
スフィ「これは・・・私の水魔法の水人形です。」
へぇ・・・そう・・・水人形?だったのか・・・最初に言っておいて欲しかったな・・・
スフィ「さて、客船まで飛びますか」
・・・帰りはゆっくり移動しませんか