【月江さん編】月江と孝一の間に存在する壁について
月江「え、あなたのことじゃないわ」
日曜日、喫茶店で放課後の話の続きを聞いていた。
『初デート』気分で気合いを入れまくっていった俺に突きつけられたのはその言葉だった。
その言葉に俺は愕然とした。なんと君恵の『気になるヒト』というのは『俺ではなかった』らしい。
月江「100歩譲って翔平だったとして、気になるヒトがいるから手伝って欲しいって文脈がおかしいでしょう?」
ええ、その通りだが・・・
消去方で俺しかいないって結論になったというか
俺であって欲しかったというか
というか・・・100歩譲らなきゃダメなのかよッ・・・
三島「・・・じゃあ、『気になるヒト』って誰なんだよ・・・」
月江「・・・ちゃんと言わなかった私も悪かったわ・・・名前は・・・」
月江「・・・」
三島「・・・」
真っ赤になって・・・押し黙る月江
三島「・・・君恵・・・さん?」
月江「・・・ダメ・・・名前を言うだけで・・・すごく恥ずかしいわ」
タメが長いよ・・・
君恵とは幼稚園以来の付き合いだが・・・
俺の知っている君恵はいつもサバサバして遠慮のない冷血美女だった。
こんな姿初めて見る・・・それだけに本気ってことなのか・・・
月江「水上・・・孝一・・・」
水上・・・孝一・・・?
って・・・まさか・・・いつも壁を殴ってる・・・あいつの事なのか!?
$$$
翌日、休み時間
三島はいつものクラスカースト上位のメンバーと楽しいおしゃべりをしながら
こっそり、机に突っ伏して寝ている孝一にちらりと目をやる。
君恵は昔から感性が少しズレたところがあったな・・・
それにしてもこんな『得体の知れない奴』好きにならなくてもいいのに・・・
そいつクラスに友達いないぜ?
そんな浮いた奴と君恵が話なんかしてたらクラスの連中から白い目で見られるだろうに・・・
君恵はこっち側のグループなんだ。
あっちに行っちゃダメなんだ。
君恵と水上の間に存在する壁はずっとずっと厚いんだぜ?
三島は昨日の孝一のことを恥ずかしそうに話す月江の姿を思い返す・・・
悔しい?
悔しい気持ちはもちろんある・・・
だが・・・それ以上に・・・
三島は大きくため息をつく。
悔しい?・・・
悔しい気持ちは確かにある・・・
そんな常識も知らないのかよみたいな感じになってる。
三島「なあ、俺も壁殴った方がモテるんだろうかな?」
孝一「・・・ファッション壁殴りはお断りだ。」
「ああ・・・そう」