【過去編】魔法協会と地理的関係
ずっと北にあるウツロの故郷
北支部のある街ミストクラノスの北には山脈が広がっている。
その山脈とふもとの平原を超えてずっとずっと先には『ラグベール王国』という国があった。
なぜ過去形なのかというと・・・その国は・・・10年前に・・・たった一日で跡形もなく滅んでしまったからだ。
ウツロは任務で山頂の村へ向かう途中、ふと北の方を眺める。
ふー・・・
吐く息が白い。もうすぐ冬も終わりだというのに・・・やはり高度が高いと寒いな・・・
天気が良ければ・・・あの壮大なラグベール城が見えることもあるのだろうか・・・
いや、ラグベール城を覆うあの禍々しい黒い霧が晴れることなど・・・あり得ないだろう・・・
あそこはもう魔獣の巣窟になってしまった。
山脈は巨大魔獣の侵入を阻む。陸の一番の要所である北東の森はサリアーデ様の『鉄死行進』軍によって守護されている。この国は平和だ。それでいい、あんな国のことなど思い出す必要もないんだ。
ラグベール王国はウツロの故郷だった。
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数日後、ウツロは、北支部のある街ミストクラノスに帰った。
街頭で正教会のシスターが布教活動をおこなっていた。
「魔法などという邪悪な力の頼っていてはいけない!これではラグベール王国の二の舞になってしまう!魔法協会は恐ろしい組織なのです!」
この魔法協会批判はいつものことで、街の人は気にも留めない。
実質、過去の大戦から今現在まで、魔法協会がなければ、この国はとっくに魔獣に滅ぼされていただろうに・・・
ぼけーっと見ていたウツロを若いシスターが睨みつける。
「見てんじゃねーよ、この異教徒が!」と言いたげな視線にウツロはひるみつつ逃げ出す。
ラグベール王国の二の舞か・・・
確かにラグベールが滅んだ原因は『行き過ぎた魔法研究』にあったんだが・・・
専門家や自称知識人の方々は大仰に語る。
「ラグベール王国滅亡は予想できていた・・・」
「あれは起こるべくして起こった・・・」
「むしろ私は予測できていた・・・」
少なくとも・・・
10年前のあの国の人々は・・・
王の魔法研究の先に・・・
『王国の明るい未来がある』と信じてたんだと・・・そう思う
これは・・・10年前・・・俺がラグベール王国に居た時の話・・・
【お知らせ】
※過去編と現在編をごちゃ混ぜに更新していきますので、よろしくお願いします。
あああ