ウツロ 【行商人編】将来なりたい職業


【行商人編】将来なりたい職業





行商人になりたい?





親方とカルロの行商団に拾われて数か月、ここでの生活もすっかり慣れた。
カルロは人使い荒いけど、なんとかやれている気がするし・・・


俺はむしろ行商人に向いているのではなかろうか・・・


そんなことを考えながら日々を過ごしていた。


ふと、ちょうどいい枝を見つけたので、
『風切り』を放ってみる。
やはり・・・枝は切れなかった。
初歩魔法なのに枝すら切れない俺に魔法の才能は皆無なんだろうな・・・


しっかり あきらめて、見切りをつけて、
次の目標を目指さなければならないのかもしれない。





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ある日、
カルロとウツロは立った二人街道を進んでいた。
行商団への合流を急ぐ。

こんなことになったのも薬草を摘んでいて遅れたためだ。

ウツロ「欲張るから・・・」

カルロ「バッカ、ウツロ、あんな品質のいい薬草があれだけ生えてたら、見逃せないっての!」



急がないと・・・この辺りは魔獣の出現も多いって聞くし・・・



言っているそばから魔獣が現れた。


大きい狼のような魔獣だった。
ナイフで威嚇しながら全力で走る。
カルロ「あと少し、あの開けた場所まで行けば、流石に追ってこないから・・・」
ウツロは振り向く。狼は予想以上に速くカルロに襲い掛かる寸前だった。



カルロ!



ひゅん、と風を切る音が聞こえたと同時に狼に剣閃が走る。
狼は傷を受け、驚いて逃げていった。
見るとひとりの剣士が立っていた。
この人に助けられたようだった。


ん、この剣士なんだか見覚えが・・・



ウツロ「・・・ジレン」
ジレン「お、お前か・・・」




カルロ「知り合い?」

ウツロ「ああ、ジレンは・・・ま・・・」
口を塞がれる。


ああ、隠密任務なんだっけ?


ウツロ「前に落とし物を届けたことがあって・・・ねぇ」
ジレン「ああ、あんときは世話になったなぁ・・・」



肩に載せた手に力が入る・・・
痛い、痛い、痛い・・・





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親方にこっぴどく叱られた後、遅い夕食を食べる。
冷めていたけれど、まぁおいしい


カルロ「それにしても・・・今日助けてもらった剣士様は・・・カッコよかったねぇ・・・」
うっとりするカルロ・・・



ジレンが・・・カッコいい・・・だと・・・



ありあえない・・・あのジレンだぞ・・・
・・・


いつも無感動なウツロだったが、
今この瞬間・・・それがとてもとても『悔しい』と感じた。



夜中、目が覚める・・・
気が付いたら、枝にナイフを振って『風切り』の練習を続ける自分がいた。
意味なんて・・・ないのに・・・