『vs白馬 その2』


『vs白馬 その2』




黒峰・・・なんて顔・・・してんだよ・・・




それがなぜかはわからないが黒峰の顔はとても憔悴していた・・・
サッカー部員たちは・・・ボロボロと涙を流す。


(・・・え、何この人たち)
周りのテニス部員や一般人はその様子に困惑して距離を取る。


馬鹿野郎・・・



俺たちはそんなお前を見たかったんじゃないんだよ



フェンスにしがみついてサッカー部員は次々叫ぶ。
「黒峰!!!頑張れよ!!!俺たちはお前のこと応援してるぜ!!!」
「ああ!!そうだ!!!」
「頑張れ黒峰ーーー!」





$$$





無意識にボールにだけは最後まで食らいつく・・・
転んで弱弱しく立ち上がる。


バクバク鳴る心臓を押さえて・・・
息を整える・・・
ゆっくり・・・ゆっくりと・・・息を吐く・・・



なぜだ?



こうなるとわかっていてなぜここまで頑張った?



・・・
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・



そんなこと決まっている・・・
もし勝てば・・・
強くなれば・・・舞浜に・・・



『振り向いてもらえるかもしれない』って思っていたからに決まってるッ!!!



ラケットを握る手に・・・力が戻る・・・
強く・・・ボールを叩く




放たれたボールは直線状にネット上に待ち構える白鳥へ飛んでいく


「フラットボール・・・アウト?」


ボールを見送る白鳥・・・ボールの軌道は彼の予測からズレて・・・ストンと落ちる


「・・・入った?」


(いつもの刷り上げるスピンボールじゃない・・・フラット気味に強く叩くことで・・・回転量が増しているんだ・・・)




黒峰は喜ばない。
その姿は謙虚で礼儀正しく見えるだろうか・・・
正直、黒峰の中に・・・喜びなんて感情はなかった。

ただ・・・ひたすらに・・・その歪んだ動機に突き動かされる。



「・・・」



黒峰が押し始める。
フラット気味のスピンに白馬のボレーが乱れ始める。


流れ・・・
ああ・・
流れ変わったな・・・


そうそう、これだよ、これが見たかったんだよ・・・


全く、遅いんだよ


「行け行け黒峰ーーー!!!」
「頑張れ黒峰ーーー!!」





$$$





7−5、黒峰の勝利
最後まで予断を許さない試合であった。




最後の握手・・・



「今日は完敗だ」
爽やかな白馬の笑顔・・・
眩しすぎて、浄化されてしまいそうだ。


(『今日は』か・・・俺はいつも完敗なんだけどな・・・)



「ひとつだけ・・・聞きたいことがある」



「正直、お前の事、普通ぐらいでそこまで強くないと思っていた・・・だからこそ、知りたい・・・どうして急にそんなに強くなったんだ?」


「・・・え」
言葉に詰まる黒峰


「私も気になるなぁ・・・」
乗っかる舞浜・・・



「・・・」
「・・・」


言えるわけ・・・ないだろっ



その理由は謎のまま・・・
黒峰はさらに強くなっていくのだった。










聡子先生の前で結果を報告する。



こんなこと言うのは他の部員に悪いってわかっているんだが・・・

勝ってもさ・・・何も心が満たされないんだ・・・




・・・黒峰君・・・それは・・・ハングリー精神って奴だね!