黒髪の魔女イズルカ
目が覚める・・・
真っ暗だ・・・
体中が痛い・・・
ここは村の診療所のベットのようだった。
窓から差し込む月の光が眩しい。
私はその月を眺めたくてベットから起き上がる。
窓の外、誰かが散歩しているのが見えた。
ほとんど無意識に何かに導かれるように外に出る・・・
「あら・・・気が付いたのね」
青いふわふわの髪の女性・・・
月の光に照らされた彼女はとてもとても綺麗でこの世の物とは思えなかった・・・
紺色のローブ・・・この人・・・魔法協会の魔女か?・・・
「あなたを助けることが出来て・・・本当に良かった」
「・・・あ・・・わた”し”なんて・・・別に」
どもってしまう私の声・・・ああ・・・馬鹿
狼の襲撃で意識を失った直後、
魔法協会の部隊が到着して狼たちを殲滅したそうだ。
私は食われて死んだと思われていたが、ギリギリ生きていたらしい。
意識を失ってなお、髪魔法の棘棘が発動し続けて、狼が毛嫌いしたんだと
ふふ・・・狼に食べてさえ もらえない私の産業廃棄物具合よ
白い花の咲く原っぱに腰かける。
綺麗な女性から、いい匂いがする・・・ドキドキする。
「私の名前はアクアローナ=アウディーネ・・・あなたのお名前は?」
アクアローナ?
それって魔法協会七賢人の・・・
あのこの国を救った英雄の・・・あの・・・あわわわ
目を丸くして、地面に臥そうとする私
そんなに畏まらないでと戸惑う彼女・・・
しばらく談笑した後
私に一言問いかける。
「ねぇイズルカちゃん、魔法協会に入らない?」
「・・・へ・・・」
全く予想もしていなかった言葉に私の思考は停止する。
私が魔法協会員に
「いやいや・・・無理です、無理に決まっています」
私・・・不細工だし
黒髪だし
内面が・・・ドクズだし
私の言葉に優しい目で笑う彼女
「魔法協会は、誰でも入れるわけじゃないんですよ、試験もあるし、最終は面接だっておこないます・・・それでね・・・私の魔法協会に入って欲しい『第一条件』は・・・」
『戦う意思のある目をしていること』
イズルカちゃん・・・あなたはそれを持っているわ
・・
・・・
・・・・
私に・・・戦う意思が・・・
ああ・・・
あああ・・・・
ああ・・・・うわあああああああ・・・ああああああああああ
私は汚い声で大泣きした。
ずっとずっと涙が止まらなかったんだ。
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数年後・・・
魔法協会本部の廊下を私は歩いている。
全く運命という奴はよくわからないものだ。
まさか私が魔法協会の魔女になるなんてな
『黒髪の魔女イズルカ』といえばそこそこ有名らしい。
同じ隊の後輩男性剣士たちが私に駆け寄ってくる。
「イズルカさん、お疲れ様です」
「俺のドジをフォローしてもらってすいません」
「ホント、イズルカさんの攻守にわたって隙の無い戦いぶりはカッコいいよなぁ」
私はなるべく顔色を変えない様にその場をダッシュで離れる。
廊下の隅で丸くなり、手で顔を覆い隠す。
「やべぇ絶対、あの男ども、私の事、いやらしい目で見てる、エロい目で見てる」
うおおおお
「いや、そんなことはないだろ」
後ろから声がする。
なんだ、ウツロか
私と奴は一応 同期だ・・・
・・・お前を見ても何も感じない
うーん、むしろ若干のシンパシーを感じる。まぁ私の方が奴よりマシだけどな
少し前のだったか
私を魔法協会にいれてしまうおうなんて話が出たことがあったな・・・
その話はいつの間にかとん挫したようだったけど
私としてはほっとしていた。
少し前のことだったか
私を魔法協会に引き取ってもらおうなんて話も出たことがあったか。
私はその話がなくなってほっとしていた。
魔法協会の魔女?誰かを守る?
くだらない・・・
私の魔法は徹頭徹尾
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