ウツロ その努力は本当に必要か

【行商人編】川べりの歌姫




ウツロ:首飾りOFF状態





レイスは歌を歌い始める。


な・・・なんだこれ・・・



ウツロは芸術の知識に乏しいが、
ラグベール城、行商団で聞いたことのあるどの音楽よりも綺麗で素晴らしい。

心が穏やかになり、それでいてキリっと冷たい水に満たされるような歌声
そして、心の奥底が暖かくなる・・・


ヤバい・・・


目頭を押さえる。
自然と涙がこぼれて止まらない・・・


「ぶらぼー、ぶらぼー!!」と拍手で叫んでしまった、ちょっと恥ずかしい。



レイス(かなり魔力抑えて歌っているのに・・・効果てきめんね)





ウツロ:首飾りON状態





ぼえぇええええええ



レイスは歌を歌い始める。


な・・・なんだこれ・・・



汚い、声が汚い。
音程も外してるってレベルじゃないし。
ちょっと頑張って追随しようとしているところが逆にモヤモヤする。
初めて聞いたときの蟲の羽音みたいだと思ったけど
絶妙に嫌悪感のある音波を出している。

逃げたい、ここから逃げたい。

精神が不安定になってきた・・・



・・・



レイス「・・・どうだった?」



ちょっと上目遣いに可愛く尋ねるレイス



ウツロ「・・・一言でいうと・・・『もう許して下さい』って感じだ」



レイス「そのコメントは流石にひど過ぎだろう」
レイスは右手に魔力を集中させる。
ウツロ「お前が正直に感想言えって言ったんだろうが!」




ファシルドール3日目、
夕刻、今日もウツロは人気のない石橋の下で歌姫レイスの歌の練習に付き合わされる。


歌姫レイス・・・
旅の一座の一員の彼女は、最近、その歌声で大ブレイクして
今やファシルドールの有名人だ。



幼い頃から歌手に憧れて、練習を始めた彼女、
最初は上手に歌えない日々が続いた。
ある日を境に人々が自分の歌に感動して涙を流すようになる。
自分の歌はこんなにも上達したんだ、そう信じこんだ彼女は、たくさんの聴衆の前で歌い続けた。

そして、ある日、ふとした拍子に気づいていしまった。自分は歌で感動させているのではなく
無意識に魔法でそうさせていたという事に・・・



なんというファシルドールの闇
そんなこと知らずに、馬鹿な聴衆のひとりとして
あの『偽物』の歌で感動していたかったが。




ファルシドールの石橋、
川面に反射するランプ花の光・・・
歌うレイス・・・


そして、汚い声・・・











レイス視点





解決方法はわかっている。


あの首飾りをつければいいのだ。



ちゃんとお金は払うわ

これだけあれば女だって買える















しばらく時間が経ったが一向に上達する気配がない。
そもそも、素人の俺に歌の指導などできるはずもないし



「俺以外のもっとちゃんとした指導者に教わった方がいいんじゃないか?」



「・・・そんなこと・・・わかってるわよ」
気落ちした顔で返事をする彼女


「でも私はきっと無意識にまた魔法を使ってしまうわ」