オリジナル小説

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右も左も分からない大嵐で、悪魔にたどり着く前に舟は大破し、キロと使い魔は大海原に放り出された。
それから必死で船の破片にしがみついて、意識が薄れて・・・





島に流れ着いた。
ぼんやり空を見上げると丸い天井から青い空が小さく見えた。
キロ「!?」
少年「父ちゃん、気が付いたみたいだ!」



まだ年端もいかない少年と中年の優男が座っていた。
優男のほうは、グラス、少年のほうは、カップという名前らしい。
父親は足が悪いのか、杖をついて歩いている。



・・・・



優男「いやー今、使い魔さんにお話をうかがっていましたが、大変な苦労をされたようで」
使い魔「いや、グラスさんのお話こそ興味深い」
少年「こいつ、ちっこいのにすげぇな」
少年はポンポン使い魔の頭をたたいた・・



キロ(こいつ、すっかり、なじんでやがる)




キロ「今、どういう状況なんですか?」
使い魔「ここは、港町と貿易都市の間にある無人島ですよ、空を見てください」
空は、真上だけ青い空が見えていた。あとは、黒い雲が見えるばかりである。
優男「竜巻や嵐の中心は、青空が見えて穏やかだというけれど、ちょうど、この無人島を中心に嵐が起こっているんだ。ちょうど3か月止むこともなく・・・、実に不思議だ。」
少年「まーた、父ちゃんは、そのせいで3か月ここに閉じ込められてるってのに」


この親子は、港町と貿易都市の間で起こり続ける嵐の調査に来てここに流されたらしい。
そして、この島に流れ着き、帰ることもできず・・・


キロ「その足は・・・」
優男「これは、古傷で、今回のこととは無関係だよ」

キロ「どうやって、3か月も・・・」
優男「ここは、湧水や雨水も豊富だし、服に縫い付けていた作物の種を育ててなんとかね。そうだ、お客さんも来たことだし、今夜はごちそうにしようか」
キロ「ごちそう!?」


その日は、焼いた魚を食べて、眠りについた。
キロ「この嵐って・・・」
使い魔「ええ、暴風悪魔がこの島を中心に居ついています。このままだったら、何年、何十年経とうが、この島から出ることは不可能です。」

キロ「・・・・・」




キロ(悪魔を倒せば出られるのか・・・・でも、海上にいられたんじゃの手の打ちようがないし・・・)




1,2,3、4・・6,7・・・キロがこの島に来てから7日が経過した。
使い魔は悪魔退治しろってうるさいけど
だんだんこの島の生活に慣れてきた。
キロは空を見ながらぼんやりしていた。





キロ(この世は、どこへ行っても地獄・・・ここから出られないのなら、無理に出る必要なんてないよなぁ・・・ここで一生を過ごす・・・そういう運命だったのかも・・・)






ふと下をみると少年が浜辺を歩いているのが見えた。
何をしてるんだろう??
少年は、しきりに誰もいないのを確認している。
キロ「わ!」
少年「ぎゃあああああ」
キロ「なにしてるんだよ、こんなところで、(ニヤニヤ)」
少年「う、うるさいなんでもない」
少年がしきりに隠す後ろには・・
キロ「・・・・舟だ。」


むかし誰かが乗り捨てたものだろうか、ぼろっちい舟が置かれていた。
少年「あと少しで修理が終わる」


少年「この舟は父ちゃんと一緒に見つけたんだ。俺は、すぐこれで脱出しようって言ったんだ。でも父ちゃんは、嵐が収まるまで待った方がいいって」
キロ「当たり前だろ、この舟でもあの嵐じゃひとたまりもない、おまえもひどい目に合ったんだから・・・」
少年「分かってる!でも、いやなんだ、ずっとここにいるの、もう飽きたんだ、俺は父ちゃんみたいな冒険家になる、その夢のためにこんなところで立ち止まっていられないんだ!」


少年の曇りないまなこにキロのまなこが曇った。
キロ「もっと、現実を見た方がいいなぁ、少年よ、絶対に脱出できないし、できたとしても、この世の中は地獄、悪夢を見るのがヲチだ」
少年「それは、アンタだけのことだ、この無職!!」
キロ「な・・・な・・・なんでそれを!!!」
少年「使い魔のひとから聞いた。俺はアンタとは違う!父ちゃんの跡を継いで、立派な冒険家になる輝かしい未来が待ってるんだ!!」
キロ「む、無理に決まってる」
少年「絶対にできる!!」
キロ「・・・・う・・・う・・・馬鹿ーーーーー!!!」
走り去るキロ


使い魔はその様子を観察していた。
使い魔(子供に言い負かされる、大人・・・)




キロが落ち込んでいるところへ
グラスさんがやってきた
優男「我が息子が申し訳ない・・・」
キロ「いいんです、本当のことですから・・」
優男「わたしは駄目な父親です。息子を親戚に預けておく選択肢もあったのに、結局私のわがままでこんな危険なところまで連れてきてしまって、ここから出られなければ、息子の夢を奪った最悪の父親だ。」
キロ「・・・・」



父親が去った後、使い魔がひょこり出てきて、
使い魔「ここも、ずっと住めるわけではありません。マキにくべる木ももう少ないですし、住めなくなって必要に駆られて脱出するか、今脱出を試みるか、選択肢は2つです。」



キロ「・・・・・何が言いたい?」
キロは、使い魔のほっぺたを引っ張った。
使い魔「いえ、だから、早く、悪魔を退治してほしいなぁと、痛い痛い」



キロは穴のところにたくさんの傷があるのを見つけた。
使い魔「おそらく、昔この島に流されたひとが付けたしるしなんじゃないですかね。昔は罪人を閉じ込める監獄として使われていたそうですし」

キロ「この島の悪魔はその罪人たちなのかもしれない」

使い魔「罪人ならばここから出て自由になりたいって思うんじゃないですか?」


キロ「たぶん・・・・知ってほしかったんだ。自分がこの島でどれだけ苦しい思いをしたか・・・・」


使い魔「・・・・」